次元機神センチュリオン 最終話「次元を超えた絆」【ディレクターズ・カット版】
瓦礫と火の海に巨体を飲まれ、白銀の
『
ひび割れたキャノピーの向こうに見えるのは、無数の触手を
「最早、ここまでか……」
「結局、私も君も……自らの宿命に抗うことは出来なかったな……」
闇に染まるキャノピーのグラスに、自嘲を込めて口元を
――自分もこのまま滅びよう。世界の滅びとともに――。
暗黒に染まった天を仰ぎ、レイジが目を閉じかけた、そのとき。
「ふざけんな!」
聞き覚えのある女の声が、突如、五感を超越して彼の心に響いた。
レイジは目を見開き、息を呑んだ。
「カスガ君……?」
「笑わせないでよ。あたしには最後まで諦めるなって説教しといて、アンタはそんなタコにやられただけで戦うのをやめちゃうわけ?」
光の中に現れたのは、彼女の姿だけではなかった。
漆黒のマントを
「容易く闇に身を委ねるな、レイジ。貴様は我輩を光の道へ立ち返らせてくれただろう!」
「諦めては駄目です、レイジ
「拙者も
それは、彼が九つの世界で共に戦った戦士達の光だった。天空に浮かぶ九つの地球から、今、戦士達の想いが次元を超えて彼の心に流れ込んでくるのだ。
牙のヘルメットを被った恐竜人類の少年が。スーツを着崩した悪漢刑事が。白衣姿の若き天才医師が。ピンク色のステージ衣装を纏ったアイドルの少女が。オレンジの宇宙服に身を包んだ青年科学者が。光の中に立ち並び、レイジに頷きかけてくる。
レイジの手元がかっと熱く光った。力を失い灰色に染まっていた筈の九枚のカードが、今、再び虹色に光り輝いていた。
「そうだ……私はもう一人ではなかった。たとえ闇に飲まれようとも……私には、次元を超えて紡いだ絆があったのだ!」
九人の戦士達が光の中から彼を取り囲み、手を差し伸べてくる。
「おおおっ!!」
レイジは叫び、
『
ギガタノトーアの巨大な口から、闇の
【
邪神の闇をかき消すのは、闇より
【
その巨体はたちまち銀色の光に包まれ、天空を駆ける科学の翼へと変わる。戦闘機形態に
【
『キシャアァァオ!』
醜悪な唸り声を上げ、邪神が触手を
「ザタン。カスガ君。
邪神の触手が鋼の刀を受け止め、叩き折る。天を覆う巨大な姿が
「勝利を呼び込むのは、最後まで諦めない心だ。そうだろう、マサル君!」
【
【
【
右腕で唸りを上げる真紅のドリルを振りかざし、
「マスター、今です! 私もろとも!」
紺碧の瞳を見開き、
「君は私のパートナーだ。
レイジは
【
ミクロ化能力でコアに飛び込んだ
「マスター!?」
「共に生きよう。私と」
【
「頑張れっ……!」
「お願い……邪神を倒して」
「勝ってくれ! 正義のロボット!」
【
両脚のロケットから激しく炎を噴射し、
真空の宇宙に飛び出し、
九枚のカードが独りでにレイジの眼前に飛び出し、重なり合って新たなカードを形作る。
【
そして、センチュリオンは最後の
【――
「行くぞ! センチュリオン!」
虹色の光で星空を染め上げ、白銀の機体が真空を駆ける。熱く燃え上がる想いを拳に乗せ、究極の一撃が炸裂する!
「ファイナル・ディメンション・ブレイカァァァッ!」
右腕を大きく振り抜き、センチュリオンの拳が邪神の巨体を打ち貫く。遥かな
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
邪神機の残骸が無数の
「なんだか寂しいですね、マスター。それぞれの世界の皆さんにお別れを言うこともできないなんて」
「私にはお似合いさ。……元より、私と彼らは交わることのなかった
センチュリオンの肩の上に出て、レイジは手にした九枚のカードに目を落とす。カードの絵柄は未だ消えていなかった。そこに描かれた各々のロボットの姿は、彼がこの旅で得てきた絆の証だった。
「おぉい、レイジ。何を
突然響いたその声に目をやると、今まさにステルス機能を解いたらしきルパンジェットのキャノピーから、憎たらしい戦友が顔を覗かせていた。
「貴方……。最後の戦いに駆け付けもしないで、今更ノコノコと……」
レイジが呆れる気持ちを抑えもせず言うと、その男、カイトは「ははぁん」と苛立たしい笑いを返してきた。
「お前、知らねえな? お前がこの世界でギガタノトーアと戦ってる裏で、俺様がお前の代わりに九つの世界を巡って奴らの侵略を食い止めてたことを」
「なに?」
「感謝して欲しいぜ。……さて、俺はもう行くからよ。次の物語に向かってな。またどこかの地獄で会おうぜ」
別れの言葉を返す
「くすくす。あの人、いつも神出鬼没ですね」
「二度と会いたくないものだ。……さて」
センチュリオンの機上から夕陽を眺め、レイジは言った。
「我々もそろそろ行くとしようか」
「はぁい。でもマスター、どこへ行くんですか?」
「さあ。
己がどこから来てどこへ向かうのか。記憶を失った彼にはそれを知ることは叶わない。だが、それでいいのだとレイジは思っていた。己の行き先がわからないのは、人間なら誰だってそうだろう。一人の人間として生きていこうというのなら、むしろ行き先など知らない方がいいのかもしれない。
「次はどんな世界に繋がるのか、私、楽しみですよ」
「ディメンションドライブ、オン!」
宙空に開いた虹色の渦の中へ、白銀の機体は飛び立つ。どこの世界からの借り物でもない、彼ら自身の物語を求めて。
センチュリオンの――司レイジの真の物語は、これから始まるのだ。
(『次元機神センチュリオン』――完)
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