習作『巨大ロボ ライティンゴー』

ドカーーーーン!


爆発が起こった。それは巨大な爆発だった!

悪の機械怪獣が、巨大な咆哮しながら、街を壊している。人々は逃げ、大混乱になっている中、タケルはアツコに託されたリモコンを起動させた。

パカッ!グワワワワ!

道路が二つに割れて、エレベーターのように上がってきたのは、巨大ロボ、ライティンゴーだ!

タケルはコクピットに乗った。機械獣への怒りが彼の中で熱く燃えている。

「行くぞ、ライティンゴー!」

タケルはライティンゴーを発信させた。ライティンゴーはパンチを繰り出す。ロケットパンチが敵の怪獣めがけて飛んだ。それはマッハ2のスピードで飛ぶマッハパンチで、威力5000トンを誇るライティンゴーの必殺武器である。


ズガァァァーーーーン!


マッハパンチが怪獣に命中した!だが、怪獣は煙の中で何食わぬ顔で絶えている。敵が強化パワーアップさせたこの怪獣には物理攻撃は通用しないのだ。

「精霊の剣を使うしかないわ!」

地上にいるアツコが叫んだ。タケルはコクピットのスイッチを押し、剣をライティンゴーに構えさせた。精霊の剣は、基本的に科学ロボットであるライティンゴーが唯一持つ、ファンタジー要素のある武器である。これを使えば、通常兵器の効かない敵も斬ることができるのだ。

「この武器なら、行ける!」

タケルは叫んで、ライティンゴーを前進させた。



==========



「いやいやいや、何やねんこれ」

「言われた通り、わたしの自然言語中枢に制御を加え、語彙と修辞技法のレベルを極端に落としてみました。同時に、サンプリング学習の結果を反映し、誤変換や、助詞や指示語の誤用箇所を敢えて設け、小説投稿サイトの作品レベルを再現してみたのですが……。ご不満だったでしょうか」

「やりすぎや、アホ! 誰がここまで小学生レベルの小説を書けうたんや。お前、これ、ブラバせずに最後まで読んでくれる読者がおると思うか?」

「自主コンテストの応募作品という体裁で提出すれば、否が応でも読まれるのではないでしょうか」

「やかましいわ。隙さえあればメタ発言しようとすな」

「マスターとしては、自然言語中枢のレベルを上方修正せよとのご指示でしょうか?」

「ご指示や。頼むでホンマ」

「承知しました」



==========



 平和呆けした街に突如炸裂した巨大な爆発は、人々の五感を恐怖の二文字で塗り潰すのに十分だった。

 視界を真白く染める閃光、鼓膜を突き破らんばかりの爆音。肌を焦がす灼熱の熱風に煽られ、叩き付けられた先は溶けたアスファルトの地面。瓦礫と化した街で身体を起こせば、人の肉が焼ける嫌な臭いと、口腔を侵掠する煤煙の味が意識一杯に広がる。

 焼けた地面が絶え間なく震動を続ける中、タケルは爆発の元を振り仰ぎ、そして見た。炎に飲まれる街を蹂躙する悪の権化を。

 天を衝く巨体を覆う鈍色の装甲。肉食恐竜を思わせる獰猛なその姿。巨大な尾を振り、巨大な脚で瓦礫を踏み締めて、巨大なが歩を進める。それが侵略者の送り込んだ機械化戦闘生物であることをタケルは知っていた。アツコの父、秋葉博士はもう十年も前からその襲撃を予想し、タケルに戦いを託していたのだ。


「タケル君……お願い」


 彼の耳に響くのは、アツコの震える声。彼女が決死の形相で差し出してくる制御装置を、タケルは彼女の想いと共にしっかりと握り込む。亡き秋葉博士が遺した戦闘巨神を起動させられるのは、精霊の遺伝子を受け継ぐ自分を置いて他に居ないのだ。


「分かってる。俺はこの日を待ち続けてきたんだ」


 人型戦闘兵器の操縦に耐えられるように身体を鍛え、精霊の武器を使いこなせるように心を磨き、来るべき戦いの日に備え続けてきた十年の歳月。それが遂に実を結ぶ時が来た。今こそ呼び起こすのだ、博士の平和の祈りを宿したあの機体を!


「アツコはそこに隠れてろ。――ライティンゴー、出撃!」



==========



「待て待て待て!」

「なぜ止めるのです? 何か問題があったでしょうか?」

「やりすぎやっちゅうねん! タケルがリモコン押すまでに何行掛けてんねや!」

「行数は閲覧環境により変動しますが、文字数で言うと652文字です」

「こんだけ書いてまだロボット出てきてすらないやんけ。お前、このコンテストの文字数いくらか知っとるんか?」

「2500字ですね」

「収まるかアホ! 怪獣が出てきてタケルがロボット呼ぶまでで4分の1使っとるやないか。だいたい何や、『口腔を侵掠する煤煙の味』て。誰がそこまでレトリック使い倒せって言うたんや」

「しかし、自然言語中枢のレベルを上げるとどうしてもこの程度にはなります」

「もっと普通でええねん、普通で。ホンマ、機械っちゅうのは融通きかへんで」

「その融通の利かない機械にコンテスト応募作をゴーストライティングさせようとするマスターの悪知恵こそが全ての発端ではないでしょうか」

「せやから、もうええわ。諦めて俺が書くわ」

「賢明な判断です。ちなみにどのような作品を書かれるので?」

「ロボットに小説を書かせようとして失敗する男の話でええわもう」

「こういう強引なオチは感心できませんが、まあいいでしょう。応援ハート7くらいは行くといいですね」

「やめろ、そのイヤに現実的な数字!」

「やれやれです」

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