第16話! 青い閃光は音速を超える!!

「随分とこいつになるのを焦らされたが、今回は暴れさせてもらうぞ」

 健斗はそう不敵に言う。

「健斗さん!このリュクシオンは武装が1つしかないので気を付けてください!」

 ヴィオラはそう忠告を行う。


 そう、このリュクシオン形態は他の形態に比べて武装が腕のかぎ爪しかない。

「本当は腕に機関砲でも入れれば良かったのだがな。容量上できなかったのだよ」と向風博士が言っていた。


「んなこたぁ分かってんだよ」

 吐き捨てるように言う健斗。

 それと同時にリュクシオンは両腕を飛び跳ねている虫型ジュライハー達に向ける。


「ターゲットは最大で8つ、いやもっとだ。……神経ネットリンク同期、イメージトレース開始」

 健斗はそう目を瞑り、リュクシオンの腕と同期を行う。


 リュクシオンの特殊な攻撃は、パイロットとの同期が不可欠である。

 そう二人の博士が言っていた。健斗はそれを忠実に実行しようとしている。


『ねぇ!早く攻撃しないの!?』

『バッタが殺到してますよ!』

 まくしたてるように叫ぶシャルールとグラッセ。


「うるせーな。少しは黙ってろ」

 健斗は目を瞑りながらそう言って二機を黙らせる。


 その数秒後、イメージが出来上がったのか、ピコンと完了を知らせる音が鳴った。


「射出」

 そう短く言った瞬間、リュクシオンの腕から8つのかぎ爪が射出される。


 放たれたかぎ爪は、鎖でつながれていた。


 勢いよく射出された8本の鎖付かぎ爪は、迷いなく虫型ジュライハー達に突き刺さり、射貫いた。


「やった!」

「いや、まだだ」

 結城は命中を喜んだが、当の健斗はそれを否定する。


 射貫いた8本のかぎ爪は意思を持ってるかのように、次の得物を狙うかのように動く。


<神経ネットリンクトレースシステムは快調のようだな>

 向風博士がそう通信を入れて来るが、健斗は答えない。集中しているからだ。


<容量の関係で他の武装は積めなかったが、これで自在に爪を伸ばす事ができるし、狙った所に飛ばす事ができる。どうだ凄いだろう>

<ペンドラニウムの生成能力で鎖は数キロまで伸びるから射程は気にしなくていいのがいいよね>

<うむ、しかし流石にそこまでは勢いが足りない>

<次は爪にジェットでも付けようか?>

「戦闘そっちのけで武装談義しないでくれません?」

 向風博士と綾川博士がそう武装の談義をする中、冷静にヴィオラが指摘をする。


<しかし見た前。彼が扱う鎖かぎ爪を!もはや鞭を超えてガンデーモンで言う処の半自立型立体浮遊武装のようではないかね!?>

「いえ、普通に鞭のように見えます。というか半自立立体浮遊武装って、あっちは無線式ですよ」

<正確には感脳波だし、有線式もあるよ>

「マウントは取らないでくださいっ」

 なんやかんや巻き込まれるヴィオラであった。


「そうこうしている内にバッタがほとんど串刺しにしたぞ!」

 結城がそう言う。ちなみに結城はそういうアニメネタがわからない。ポカン状態であった。皆も疎い人間がいる中で同志内でのみ通じる単語を使った会話をしないように気を付けよう。


 だが確かに、モニターを見ると鎖には虫型ジュライハー達の死骸が連なっており、ハヤニエ状態であった。


<ちょっとグロイね>

<仕方ないだろう>

 訳もなく言う綾川博士と向風博士。


<! バッタのジュライハーがエリアドーム以外に出現!!!多すぎる!>

 上空に旋回していたボルケーがそう報告をする。


「なに!」

 驚く結城。確かにクォーリードラゴン内のモニターのレーダーにもその群れが観測されている。


<というか集まって何かの形になってるよ!!?>

<これは……ドリル!?>

 シャルールとグラッセは焦りながら報告する。


 確かに大量の虫型のジュライハーは群衆となり一塊になっていた。

 それが螺旋を描き、あたかも巨大なドリルのような形状になっていた。

 それはエリアドームを破壊する目的なのは一目瞭然であった。


「ドリル、か」

 健斗はその巨大なドリルとなった群衆を見て呟く。

「面白い。こっちもドリル。やってみるか」

 ニヤリと笑みを零す健斗。それは普段の彼とはかけ離れた猟奇的な笑みであった。


「なるのか。この鎖の爪」

 しかし冷静にドリルになるのかと疑問になる結城。

「高速で回転できれば理論上は」

 ヴィオラもそう冷静に答える。


 2人とも、健斗の豹変とも言える笑みには突っ込まない。否、気にしていないようである。


「やれるさ。いや、やる」

 笑みを浮かべたまま答える健斗。


 すると地面に刺さっていたリュクシオンのかぎ爪は、引き戻される。その引き戻しはどんどんよ勢いを増し、鎖の間にハヤニエ状態になっていた虫型ジュライハーはただの肉塊となって飛び散る。


「リュクシオン・ドリル!!!」

 健斗はそう叫び、リュクシオンの両手を合わせる。


 そうすると、意思を持ったかのように鎖が一つの塊のようになっていく。片腕には4本のかぎ爪、両手となれば8本のかぎ爪と鎖である。中々巨大な塊となる。


 塊は宣言通り、ドリルのようになる。回転もしている。


<だけどそれだけであのジュライハードリルに勝てるの!?>

<加速があればいいのだけど……!>

 シャルールとグラッセは「いや、それだけじゃ無理でしょ」と言わんばかりの口調で言う。


「加速? あるじゃねぇか」

 不敵に答える健斗。

<そうだね。あるね>

<うむ>

 綾川博士が肯定し、向風博士も頷く。


「背中のブースター、なんだと思っていやがるっ」

<あっ!?>

 シャルールは確かに。と驚く。


 健斗の言葉通り、リュクシオンの背中は他の形態……ティランやカオと違って何やらブースターやら何やらが大量についている。


 それらのブースター群に、今一斉に火が入る。


「理論上、人類最速の時速3,377KMキー・メントの以上出せるんだっけか?」

「はい、理論上」

 健斗は航空機が今まで出せた最高速度である3,377KMキー・メントの数値を出し、ヴィオラは肯定してみせた。


「なら今日からこいつリュクシオンが人類最速機だッ」

 そう叫んだ瞬間、リュクシオンのブースターが一斉に轟く。


 殺人的な加速。


 ガンデーモンダブリューのあるキャラクターがそんな事を言っていたような気がする。とそういうのに疎い結城がそう思うが、そんな思考も秒でかき消されるような加速が3人を襲う。


 地上から放たれた青い閃光と化したリュクシオンのドリルと、虫型ジュライハーの群衆型ドリルが空中で激突する!


「くっ!なんて衝撃だ!!」

 揺れる機内。警報すら出てる惨状に結城は若干うろたえた声を出すが、目には闘志を湛えたままである。


「突き抜けろ!リュクシオン!!!!」

 健斗の声に応じるように、リュクシオンのドリルの回転数がさらに上昇する。


「現在の時速っ3,350KMキー・メント!!行けます!!!」

「当然だオラアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

 ヴィオラの言葉に、応じるように叫ぶ健斗。


 その時、リュクシオンは音速を超えた。


 リュクシオンは見事に突き抜けたのだ。



 気が付けば、そこにあるのは周辺に飛び散る肉片を背に、綺麗に着地して見せるリュクシオン。


「どうだ見たかムシケラァァアァ!!!」

 ハイになった健斗が叫ぶ。


<やはり君らとクォーリードラゴンとペンドラニウムは素晴らしい!既存の常識をこんなにアッサリ乗り越えるとは!>

<研究しがいがあるねぇ!>

 2人の博士が3人とクォーリードラゴンを称える感嘆の通信を入れる。


「やったな!!健斗!」

「最高速度更新ですよ!健斗さん!」

<すごいじゃん!>

<ええ、本当に凄かった!>

 健斗とヴィオラ、そしてシャルールとグラッセも健斗を称える通信を入れる。


<周囲に敵影なし!まさかドリルにするなんてと思ったけど、まさか並みの航空機より速くなるなんて驚きだったよ!!>

 ボルケーもそう感嘆の通信を入れる。


「ふふっ。流石に照れるな」

 鼻をこすり照れくさそうにする健斗。


 勝利の余韻に浸るクォーリーチームであった。


 だが、その余韻をかき消す警報が響く!


「どうしたっっ!!」

「何があった!!?」

健斗と結城が即座に臨戦態勢の顔になって尋ねる。


<山の方角に15KMキー・メント先にジュライハー出現だよっ!!>

 ボルケーはそう叫ぶように報告を行う。


「山の方角に15KMキー・メントだと? まさか」

 健斗はハッとする仕草をすると同時に凄い勢いでモニターを操作して地図を出して確認をする。

「何があるんだ?」

 尋ねる結城。


「ここから山の方って言えば大谷崎ダムしかねぇ!!!奴らダムぶっ壊す気かッッ!!!?」

 健斗の言葉に、全員騒然となったのであった。



 つづく。

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