第15話! 明日の新米を守れ!

<さて、今回はいつもと違う感じだ>

 綾川博士が通信でそう伝える。


 既に結城達はクォーリーマシンで飛び立ち、ジュライハーが出現した場所へと急行していた。

「どうしたんですか?」

 結城は尋ねる。

<今回の場所は少々離れている。場所は沼魚市ぬまうおし……まぁ位置はモニターに映ってるから大丈夫だと思うけど、今回のジュライハーはどうも妙なんだ>

「妙? 何が妙なんですか?」

<……連中、ついにこっちがされて嫌な事に気づきやがったか>

 通信を聞いていた健斗がやはりな。と合点がいったような口ぶりで話す。

「こちらの嫌な事? 健斗どういうことだ?」

 いまいち状況が分からない結城。

<沼魚市といえば我が国でも米所で、世界的に有名なブランド米でも有名な所だぞ? ここで連中が暴れるとなると食糧事情がやばくなるって事だ>

<健斗クンの言う通り、今回のジュライハーは田んぼを優先的に破壊しているんだ>

「なっ何!?」

 結城は声を出して驚く。

 つまり、このままジュライハーの暴れるに任せれば新米の収穫に大きな打撃を食らってしまう事になるのは結城でも理解できた。


<折しも今は秋。刈り入れ時の最盛期でしょうに……>

<最悪、沼魚市の農家たちが失業するだろうな>

「なんとしてでもそれは避けないと!飯だけは死守しねぇと駄目だな!」

 健斗の言葉に結城は憤慨するように闘志を燃やす。

<ふ、飯の事になると俄然やる気だな。まぁ俺も新米食えなくなるのは御免だから、乗ってやるよ>

 その姿に微笑するも、やる気を出す健斗。


「そういえばシャルールとグラッセは? 確かあの2台は長距離を飛べなかった筈だぞ?」

<ああ、それなら右後方からものすごい勢いで飛んでくるのがあるだろう?>

 結城の問いに、並行して飛行をするファイア・イーグルのボルケーが答える。

 

 そう言われてモニターのレーダーを見る。確かに後方右より何かが高速で飛んできている。まさかこれが?


<ウヒャァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァ……>


と思ったら、シャルールがそんな声をドップラー効果を交えて高速で通り過ぎる。


「速くない?」

 その珍妙な現象に素が出る結城。

<ウチの研究所のレールガンの応用のカタパルト射出で打ち出したのさ>

<ちなみにあの二機はこちらで改造しておいたから楽しみにしているが良い>

 綾川博士と向風博士が答える。


<もうすぐ沼魚市です!>

<よし!行くぞ!>

 ヴィオラがそう告げ、結城はさらに加速を行う。他の3機もそれに続く。


 だが、沼魚市に到着したGRGFの前に現れたジュライハーは異様であった!


「バッタ!?」

「イナゴか!?」

「コオロギでは!?」

<キリギリスって線はッ?>


 そこには10m前後で飛び跳ねる大量のバッタ型のジュライハーの姿があった!

ピョンピョンと飛び跳ねて地面の田んぼや車、収穫用機械を吹き飛ばしている。


<こいつら形がキモイ~>

<くっ、攻撃が当たらない……!>

 そう嘆いて苦戦を強いられているシャルールとグラッセであるが、なんとこの2台はロボット形態になっていたのだ。


<うーん、せっかくロボット形態への変形が可能になる改造したのに、これではあまり生かせないではないか>

 そう残念そうな声を出す向風博士。


<PEエリアドームスフィア投下。PEエリアドーム展開。したけど、これどうする?>

 ボルケーがそう報告をする。


 動きが速い上に小さい。つまり非常に厄介である。


 元は車両で20m程の、クォーリードラゴンに比べれば小型のシャルールとグラッセですら攻撃を当て難いのだ。

 50mのクォーリードラゴンでは攻撃を当てるのは困難であろう。


 しかし、試しに思い切りハンマーを素振りするとその風圧により何匹かPEエリアドームの網にぶつかり、まさに電撃に撃たれた虫のように痙攣を起こし絶命する。

 だが、なんとしてでも外に出たいジュライハーはその電撃網にぶつかり、少しでも弱らせるように頑張っている。


「効率が悪い!何かいい手は……」

 文字通り苦虫を噛み潰したような顔で思案する結城。


「リュクシオンだ。リュクシオンに合体し直すぞ、結城!」

「できるのか健斗!」

「任せろ。新米は俺が守る」

 そうニヤリと不敵に笑う健斗。

 それを見た結城は確信し、合体に応じる。ちなみに、PEエリアドームはエネルギーの関係上クォーリードラゴン達は素通りできる。


 かくしてPEエリアドームの上空にて、クォーリードラゴンティランは合体を解除して2号のリュクシオンを先頭に3号のカオ、そして最後に1号のティランがぶつかる。


「クォォォォリィィィィリュクシオン!!!!」


 かくして2号機形態リュクシオンは完成する。


 機体の配色は青と灰色。

 ティランに比べれば劇的にスラリとした印象で、工業的デザインかつ人型を模しており、身体全体のツノ等の突起物は控えめである。

 だが、単純に人型とも言えない。

 何故なら腕は第一関節部が球状で、そこから生えている腕はスラリとしたフォルムだが異様に長く、それでいてなんと手が4本爪となっている。

 ティランはあえていうなれば竜人型と言うべき姿だが、手は普通の手であるのに対して、このリュクシオンは人型だが腕が長く4本爪である。


 「博士、これ絶対アニメのガンデモーンのパクリですよね? しかも腕は敵水中メカの腕ですよね?」

 <ハテ、ナンノコトダ>

 ヴィオラの指摘に、すっとぼけるように言う向風博士。


 ついに2号機形態リュクシオンに変形したクォーリードラゴン。


 だが、この時、別の魔の手が別の場所において伸びようとしている事に気づく者はほぼ皆無であった……


続く。



☆捕捉☆


Q,ガンデーモンとは?

A,東咏とうえい帝国で広く知られている国民的ロボットアニメシリーズ作品およびその作品に出てくる主役機体である。

 作品のあらすじとしては銃の悪魔と言われる新兵器を操り、悪い宇宙共和国と戦う、そんな話である。

 しかし最近はツインゼロゼロ・ガンデーモンやオルフェン孤児・ガンデーモン等近接主体のガンデーモンも出ており、ファンの中ではガンとは、デーモンとは一体……と言われているが、それでも根強い人気を誇っている。

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