第14話! 結成!GRGF(グレガフ)!

「えー。そんな訳で、我々は今日から首相直下の実働部隊『広域グローバル救助レスキュー防衛隊ガードフォース』略して『GRGFグレガフ』として一緒に活動をしていく事になりました」

「だからどういう訳だ!?」


 綾川博士の突然の宣言に、間髪入れずに突っ込む結城。すっかりいつもの光景と化している。


「やー。それがさ。この前の高速道路のジュライハーの時にさ、シャルールとグラッセが勝手に動いたじゃん?」

「ああ、確かに。そんな指示は聞かないよ。とか言ってな」

 綾川博士の言葉に健斗は答える。


『本来ウチとそっちは別の組織だからね、仕方ないと言えば仕方ない事だよ』

「でもこれからはそうは言ってられないのでは?」

 ボルケーがそう説明するも、ヴィオラがそう問題を指摘する。


「国の偉い人もそう考えてね。最初の襲撃の時からああいう化け物やら災害やらの時に動かせる組織の結成を考えていて、色々と頑張ってたみたいなんだ」

 綾川博士はそう説明をする。


「しかしそうなると司令は?」

「私」

 健斗の問いに即答する綾川博士。


「え!?綾川博士、技術官で部隊の指揮とかできないんじゃないんですか!?」

 結城は驚く。

「うむ、私も最初はそう思っておった」

 そうだそうだとばかりに出てくる向風博士。

「こう見えても私は士官学校を次席で卒業して軍事大学入って、途中でこっち入ったクチなんだよ」


「え、ええ!? じゃあ……超エリー……ト!?」

「なんでまたこんな所に!?」

 結城と健斗は驚く。


「まぁここで開発されてるロボットを見て、憧れちゃったからねぇ。憧れは止まらないんだよ二度と!」

「憧れは理解から最も遠い感情なんだが!?」

「まぁ実際ここに入って色々と変わったからねぇ……」

 遠い目をする綾川博士。


「……ちょっと待ってください。GRGFは、現状では俺達と救助ロボの混成で、救助隊の延長でしょう? そうなれば組織の性質的には民間寄りな筈。なら軍人である綾川博士が司令になるのは問題があるのでは?」

 ふと冷静に考える健斗。


「どういう事だ? 問題なのか?」

「既に軍隊という会社に就職しているのに、子会社でもない会社の社長になるのはどう考えても不味いだろう?」

「ああ、確かに」

 結城の問いに健斗は答える。いや、これで通じるのか……と若干健斗は呆れる様子を見せたのは内緒。


「流石健斗さん。そこに気が付くとは」

 ヴィオラはそう感心するように言う。

「いや、よく考えれば分かる筈だが……それで、結局誰が司令になるんですか?」

 健斗はそう食い気味に言う。


「私」

 そう言ったのは向風博士であった。


「散々じらしておいて結局そういうオチ!?」

 結城は叫ぶ。結局今までと変わらない。


「いやぁ。この件に関してはそれが焦点でさ。さる大企業の会長さんに任せようという話もあってさ」

『それって大和河会長の事かい? 大和河司令はウチの機動救助部隊の司令だった筈だけど』

 綾川博士の説明にボルケーがそう指摘する。


「まぁ結局GRGF結成により機動救助隊も発展解散って事になるね」

『ジュライハー以前にもちょくちょく出動していたけど、やっぱり解散って事になるのかい……』

「うむ、すまない。しかしこの騒動が終わればGRGFでも普通の救助出動を行う予定だ」

 向風博士がそう謝りながら説明を行う。


「そうなると将来的にはクォーリードラゴンも救助活動へ?」

「そうなるね。いつになるか分からないけど」

「でもクォーリードラゴン程の巨体だと余程の大規模災害救助ぐらいしか出せませんよ」

 健斗の問いに綾川博士が答えるも、ヴィオラはそう苦笑するように言う。


「なに、クォーリードラゴンは災害救助の他にも極地調査や宇宙開発も兼ねてるスーパーなロボットだ。色々とやる事が多い」

 得意げに説明をする向風博士。


「(皆、もうこの騒動の『後』の事を考えている……そうか。ここは前世と違い、余裕のある世界なんだ……)」

 その会話を静かに聞く結城。


 結城ことレンヤ・アビントンのいた前世は、とにかく殺伐とした世界であった。油断すれば死ぬ。どころではない。油断しなくても死ぬ。

 なにせ人類独立軍の戦力が1億人居て、1000万程になる程の大損害を払ってやっとテクシートの艦隊を3つ片付けても、まだテクシートには27の艦隊がいるのだからたまったものではない。(だからこそ人類独立軍はテクシートの皇帝がいる要塞を強襲したのだ)


 しかもこれでもかなり衰退していて、である。

テクシートが人類を奴隷化した時点(200~150年前)でも衰退しており、その時点で既に新造できる造船技術は失っており、人類が反旗を翻した時には保全能力すら怪しい状態であったのだ。


 全盛期のテクシートは100の艦隊が居た。と言えばその強大さと衰退ぶりが分かるだろうか?


 まぁとにもかくにも、とても『戦いそのものが終わった後のビジョン』なんて考えた事がなかった。


「(本物の肉や魚はおろか、新鮮な生野菜だけで腹を満たせるこんな世界では当然か)」

 そう静かに、しばしば悲しくなりながら結論に至る。




 これを前世の皆と食べられたら、どんなにうれしいだろうか。


 ビュッフェ形式の為、調子に乗って山盛りにした野菜サラダを前にしてそう思わずにいられない時もあった。

 だが、既に前世の肉体は失っている。嘆いていても仕方ない。むしろ侮辱ですらあるだろう。


「さっきから黙りこくってどうしたんだ? 結城」

 健斗がそう尋ねてくる。

「……いや、やっぱりクォーリードラゴンって戦闘用じゃなかったんだなって」

 結城は答える。


「うん、勘違いしやすいけど、クォーリードラゴンは変な化け物を叩き潰すロボットではなく……」

 その返答を聞くと即座に口を開く綾川博士であったが……。


 その時、研究所に警報が鳴り響く。


『ジュライハーだ!』

「うむ、GRGF出動せよ!!!」

 向風博士がそう叫ぶ。


それと同時に皆は持ち場へ急ぐ。


 「(ああ、そうだ。どんなにこの世界が余裕がある世界でも、ジュライハーがいる限り、ジリ貧になるだろう)」

 結城は駆けながら思う。


 そう、既にジュライハーにより経済に支障が起きている。

 結城がランニング後に食べるコンビニのサラダ用チキンが値上がりしているのが良い証拠である。


「(俺が守るんだ! この世界を! この豊かな世界を! 決して前世のあの辛い世界にしちゃ駄目だ!!)」


 そう心で叫ぶ結城であった。


つづく

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