第6話! ピンチを脱する為の合体!クォーリードラゴン・ティラン!


 <ジョライハーは都内のその区域に少なくとも7体。現在も破壊活動を続けている。カオに合体して肩の対空レールガンで攻撃して欲しい>




 飛行しているクォーリーマシンの中で綾川博士の説明が入る。




 「ここだけで7体もいるのか」


 結城はそう緊張した様子で言う。




 「軍はどうしているんだ?」


 健斗は軍の動向を気にするように話に加わる。




 「軍も即応部隊を展開して他の区域で応戦中。とはいえ、流石に軍隊もこんなの初めてだから対応しきれてないみたいだ。だから君たちにお鉢が回ってきたんだ」


 「だろうな。まさか街中でいきなり自走砲をぶっ放す訳にもいかないからな……」


 健斗がそう納得しながら言う。




 結城も、この世界での軍事的戦術的知識は疎いものの、民間人の避難もまだ終わってなさそうなこの状態で大規模な攻撃はできないだろうと理解はできた。




 <もうすぐ予定の地点だ。ヴィオラくん。まさかこんな形で君をクォリードラゴンに乗せる事になるだなんて……>


 「いえ、綾川博士。お気になさらず。むしろ大歓迎ですよ」


そう言って微笑むヴィオラ。




 「(いや、これから戦闘になるし、訓練してなくていいのか……?)」


ヴィオラの笑みをモニターで見つつ、結城はそう思わざるを得なかった。


 「ヴィオラ女史は研究員だからな。シュミレーターや操縦訓練は研究・開発の関係でできてるからな。それに、彼女は鍛えているようだからな……」


 結城の疑問に健斗は答えるように秘匿通信回路を開いて話す。




 「なるほど、そうだったのか。ありがとう健斗」


 「なに、気にするな」




そんなやり取りをしている内に、クォーリーチームは桜宮都内にある都内最大の公園上空へと到着した。こここそが予定していた地点であった。




 「じゃあ早速、行きます!クォーリー・チェーンジ!!!」




 そうヴィオラが叫ぶ。




 言うや否や、クォーリーマシンの3号カオに1号のティランが衝突……ではなく変形合体し、2号のリュクシオンの機体が横に2つに割れて戦車のキャタピラのように変形し、3号+1号の塊が変形した2号に突き刺さるように合体し、形状が大きく変わる。




 「クォーリー・カオ!!」


ヴィオラが叫ぶ。




 変形と合体。それこそがペンドラニウム・エネルギーの不可思議で神秘的な現象。ペンドラ現象である。


 ペンドラニウムエネルギー研究の権威である向風博士から言わせれば科学的用語モリモリになってしまうものの、綾川博士いわく「とにかくすごく不思議。なんでだろうね」と言わしめる代物である。






 ズズゥゥゥンと地響きを響かせ、夜の桜宮都の大公園に1機の超巨大戦車が突如として出現したのであった。




 「……さっきのなんだ? それになんで叫ぶんだ……?」


 「さっきの?」


健斗の言葉にヴィオラは不思議そうに返す。




 「クォーリーチェンジってなんだ……?」


 「私が今考えた掛け声ですけど? 叫ぶのは気合ですし」


何か問題ですか? とばかりに答えるヴィオラ。


 「いや、ならいい……」


諦めたかのような声で応える健斗。




 <さて、それじゃ早速攻撃して見て欲しい。こっちでも可能な限り分析を行ってる。何かあったらすぐ知らせるよ>


 「了解しました」


そう言ってヴィオラはカチカチと操作を行う。




 肩に付いている小型対空レールガンが動き、二連装レールガンが展開する。




 「距離2067。ロックオン。撃てます」


ヴィオラはモニターで、最も近いジュライハーに狙いを付ける。




 ≪じゃあ撃って≫


綾川博士の言葉に迷わず引き金を引くヴィオラ。




 バシュン。バシュンと二つの閃光が走る。




 「命中!」


ヴィオラはそう喜ぶ。


 遠方モニターには上半身がはじけ飛ぶジュライハーが映っている。小型とはいえ、音速で飛ぶ砲弾を食らったのだ。そうもなる。




 「喜ぶのはまだ早い。奴ら、俺達に気が付いたらしく、こっちに向かってくるぞ」


健斗が冷静に状況を説明する。




 「あれ、走れるんですね」


そう涼しい顔でヴィオラは照準を合わせ、引き金を引く。




 またしてもはじけ飛ぶジュライハー。




 迸る血のような体液を吹きだしながら止まるジュライハーだった肉塊。




 「この程度? あまり大した事は……」


 <!高エネルギー反応だ!>


 「え?」




 余裕にも似た空気が出てきて、これはよくないな。と結城が思った瞬間に、状況が一変する。




 その通信が入るが否や、ガガン!!と機体が激しく揺れる。




 「つぅ!!!」


ヴィオラは悲痛な声を上げる。




 「綾川博士、これは一体!?」


 <鉄の塊を音速で投げ飛ばしているようだ!!>


 結城は綾川博士に尋ね、そしてすぐにそれが本当なのかを確認する為にジュライハーの1体をモニターする。




 そこには、頭の植物状のつぼみをこちらに向けている光景があった。


 ボン!とけたたましい音を立てて発射されたそれは、こちらに向けて何かを発射させる。


 恐らくはこれが鉄の塊だろう。しかし残念ながら音速に近い速度で発射されるので確認のしようがない。




 数秒掛からずに着弾。文字にすればズガァアン。ボガァァンだのと言った物になるが、火砲の着弾音と地響きに類似した音が機体内に木霊する。


 正直、良い物ではない。




 都内最大の公園は、手入れの行き届いた素晴らしい芝生を無残にぶちまけられ土肌を露わに今や穴だらけの土の丘陵と成り果て、木々や街灯はなぎ倒され、人工池の水は着弾し爆発した弾により全て吹き飛ばされ、石床を晒していた。




 <これは自動車の鉄くずとガソリンの砲弾!?>


 「それを音速で飛ばしてるのか!!」


綾川博士の分析にそう叫ぶ結城。




 「不味いぞ。ここだと狙い撃ちだ」


健斗はそう解析する。




 「なんという対応の速さ!これは長期戦は圧倒的不利!!化け物ながら見事な対応の速さっっ!!!」


ヴィオラはそう叫びながらジュライハーを褒める。




 そう言ってる間に次々と攻撃が着弾する。




 「移動しなければっ!!」


悲鳴のような計器の警告音に、そう操縦桿を握りそうになるヴィオラ。


 「駄目だ!これどんだけデカいと思ってるんだッッ!」


 「それに避難民が危険だ!」


ヴィオラの叫びの提案に、健斗・結城はそう否定する。




 「じゃあどうすればっ!?」


 「ティランで空から攻撃するッッ!!」


 ヴィオラの悲痛の叫びに、結城はそう宣言する。




 「昼間は失敗したじゃねぇか!」


 <いや、このままじゃどの道危ない!とにかく今は散開して上空に逃げるんだ!>


健斗のツッコミに、綾川博士はそう言って退ける。




 「了解!オープン・クォーリー!」


 「その変な掛け声やめねぇか!?」


ついに何かが吹っ切れる健斗を他所に、クォーリーマシンは3機に別れ、散開する。




 流石に上空を高速で飛び回るクォーリーマシンに狙いが定まらないのか、攻撃が止んだ。




 <確かに、ティランは空中を飛ぶ事や空中制止だってできるし、ハンマーで叩き潰すことだってできる。でも……>


 「問題なのは、結城。お前だ」


健斗はそう言い切る。




 果たして昼間失敗した結城にそんな大役ができるだろうか?




 「……」


 息を飲む結城。


眼前には破壊されつつある桜宮都が映ってる。


ジュライハーの攻撃により、建物は破壊され、住民たちは蹂躙されているのだ。


恐らく、今もこの空の下で逃げ惑っているだろう。




 それは、前世の光景と同じであった。


テクシート帝国は反乱軍を匿っているとして、無関係な都市や星を度々攻撃していった。


犠牲になる罪なき人々、彼らを護れるのは自分達だけだ。






 ――俺達がやらなきゃ誰がやるんだ。






そう宣言するエースの先輩。




 そうだ。俺は、俺達は独立軍。テクシートから反旗を翻し、独立する者ども。




 だからこそ。




 だからこそ、今自分ができる事をやらなくてはいけない。






 「……やってやるさ」 




 結城はそう宣言する。その目は決意に満ちていた。




 「! やる気のようだな。任せてみよう綾川博士。それでいいよな? ヴィオラ」


 「ええ、任せるわ」


 <よし、それじゃあ任せよう>


 健斗が乗り気になり、次々と乗り気になる2人。






 「ああ、俺は仲間を、お前達を信じて飛ぶ!!合体だ!!」




 結城はそう叫ぶ。




 そして3機は加速する。合体の為の位置取りである。




 「気合入れ直して行きます!!」


そうノリノリでヴィオラはカオ号を操り、リュクシオン号に衝突……もとい変形合体する。




 ニョキニョキと金属がペンドラ現象を起こして『分裂』し、腕や足を形成していく。


 <これは……エネルギー発生量とペンドラ現象の数値が通常の3倍? これは一体……>


綾川博士が戸惑う様子を見せるが、3人は構わず合体を続行している。




 「よし、カオ号と合体した!行くぞ!結城!!!勇気の見せ所だ!!!!」


ハイテンションに叫ぶ健斗。




 「ああ、来い!健斗!ヴィオラ!!!クォォォォォリィィィィイイイイイ・チェェエエエンンジィ!!!!!!」


 それに応える結城。








「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」」」




 三人は無意識的に叫んでいた。これもペンドラ現象なのだろうか?




 <ペンドラエネルギーがさらに5倍以上!これは凄い!!まるで3人の心が1つになっているようだ!!!>




 綾川博士の感嘆の叫びと共に、3機はついに1つとなる!!!!






「「「クォォオオオオオオオオリィィィィ……ドラゴン!!!!」」」




 ググッと屈むように丸くなる。




 「ティラァァァァン!!!!!!!!!!!」




 だが次の瞬間にはバサッと翼が大きく開き、ペンドラニウムエネルギーがオーラのようにほとばしる。




「これが!これこそが!!ティランだ!!!!」


勇気の言葉が、桜宮都に響いた。



 クォリードラゴン・ティラン

全長50m、重量350t。

灰色と黒が特徴的だが、赤い水晶のようなツノがボディの要所要所に生えており、特に頭部には二対のツノが生えている。

 背中にも金属質の骨格に赤い幕がはられている大きな翼が1組。腰に小さな翼が1組。合計2組の翼が広がっている。




 「こ、これがクォーリードラゴン・ティラン……!!」

 「事前の設定とは大分形状が違うぞ……!?」

 「確かプロトと同じ形状だった筈、それが何故……!?」

その光景を見ていた研究スタッフたち。どうやら事前の設定時と形状が違うらしい。


 「綾川くん。今のペンドラニウムエネルギーは?」

 「想定の約15倍以上。3号+2号の段階で3倍。5倍ですので」

 「素晴らしい!大変素晴らしい!!!」

向風博士は綾川博士の言葉に天を仰ぐように感動する。


 「向風博士!これは一体!!?」

研究スタッフはたまらず何故事前の設定とは違う形状になったかを尋ねる。


 「わからんかね? 想定の15倍以上のエネルギー量では事前に人間が設定した形状に収まる訳がない! 1つとなったペンドラニウム炉はより適した形状になったのだ!!!」

 そのように答える向風博士。


 「何故カオの時にはそのような現象が起こらなかったのでしょうか?」

 「そりゃわからん」

「「「ありゃああああ」」」

向風博士の即答に、ずっこけるスタッフたち。


 「まぁまだ仮説の段階だからの。まずはあの化け物を倒す方が先だしの」

続きはまた明日~っとばかりに楽しげに手のひらを振って見せる向風博士。


 「そうですね。それが先決だね」

そう気持ちを引き締める綾川博士であった。



続く。

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