第5話! 出撃のクォーリーチーム!


 「ジュライハーなどという犯罪組織やテロリストは聞いた事がない」

 「ふむ。元警察の健斗クンがそう言うならそうなんだろう。映像ジャックの件は?」

 メインルームと呼ばれるミーティングルームに集められた各主要人物は各々の了見を述べる。


 「強い電波でジャックされてますね。音声のみ。相当量の出力かと。ただ」

 「ただ?」

仕切ってる綾川博士が通信無線学に詳しい研究員に訪ねる。

 「強いには強いのですが出力が安定してないんです。まるで、機械から発してない、ような」

 通信無線に詳しい研究員が躊躇いがちに言う。


 「ふーむ? そうなると生物が電波を? それもあんな物騒な声明を? ふーむ。興味深い。それこそ究極生物を名乗りもするね」

 「え、博士。あんな変な声明を信じるんですか?」

ヴィオラが意外そうに尋ねる。


 「犯罪組織やテロリストの名前にないとすれば、そう定義するしかないよ。現時点ではね」

 そう言ってため息を付く綾川博士。


 「と、まぁこんな感じに皆で集まって貰ったけど、結局ウチは別に防衛隊でもないから何をするって訳じゃないけどさ。まぁこれでとりあえず軍に聞かれたら答えられるよ」

そう言ってのける綾川博士。


確かに別に向風研究所は新エネルギーや兵器開発をする研究所であり、別に何をする訳でもなく、単に軍から「これ何?」と聞かれそうだから皆の意見を聞いた。という訳である。


そうこうしてると電話が鳴る。

 「おっと早速電話か」

待ってましたとばかりに取る綾川博士。


これはもう解散か? という空気が場を支配した。が。


 「お、おい!皆テレビを見ろ!!」

そう言って入ってくるスタッフ。


なんだなんだ電話中だぞ。いいからはよ見ろと問答の末、音量を無音にしてテレビをつける一同。


 「え……??」


テレビを見た一同は言葉を失う。


 眼前には悪魔と形容するしかない謎の生命体……腹部分に横に口が付いており、頭部は植物のような丸みを帯びた何かであり触手が無数に生えており、目玉が正面、左右、後ろに1つずつ付いている、人型のナニカ……が桜宮都(おうぐうと)の街を破壊していたからだ。



 「こいつは、一体なんなんだ?」

健斗が驚いた様子で小声で尋ねるが答えられる者は誰一人としていない。


 「まさか。これが究極生命体ジュライハー……?」

ヴィオラがそう言う。

皆が「まさかそんな」と言うも「しかしこれは……」と言い淀む。


 タチの悪い悪夢から出て来たような歪な生命体。


 図鑑や動物園で見た魔物ですらあんな形状ではない。


 我々の常識では計り知れない、別の何か。


 こんな名状しがたい、度し難い生命体が『究極生命体』だというのか?


 ……『これが究極生命体です!』とお出しされれば「そうか…」と思わず言ってしまう凄みはあるが……



 「はい、わかりました。 はい。 はい。 はいー。 ハイじゃあ、それでは」

電話越しで頭を下げるかのように小刻みに揺れる綾川博士。そう言って電話を切る。


 「そんな訳で結城クン。健斗クン、それとヴィオラくん。悪いんだけどクォーリードラゴンであれらを倒して来て欲しいんだってさ」

 「どんな訳だ!?」

と突っ込む結城であった。



       ※           ※


<えーじゃあもう一度説明するよ>


 数十分後、結城、健斗、ヴィオラはクォーリーマシンに乗り込み綾川博士の通信を聞いていた。


 <今現在、桜宮都(おうぐうと)で破壊活動を行っている未確認巨大生命体、通称『ジュライハー』をやっつけて欲しいという軍からの要請があった。まぁ市街地での戦闘だから300mmレールガンの使用は禁止。展開場所もこっちで指定するから従ってね。40mのカオが走るだけで被害甚大だから>

 「了解しました」


 ヴィオラはそう神妙に答える。

本来であれば海外留学生である彼女にこんな事をさせてはいけないのだが、かといって綾川博士が乗る訳にもいかず、ならばプロトドラゴンに乗った経験があるヴィオラ氏に白羽の矢が立ったのである。


 「カオでやるのか?」

健斗はそう尋ねる。


 <一応ね。リュクシオン号とティラン号はまだ試してないからね>


 「わかった。それで行こう」

そう言って了解する結城。


 <よし、ではクォーリーチーム。発進!>

綾川博士がそう宣言する。


 「よし!クォーリードラゴン!発進!!」

各機そう言って出撃をする。



 「しかし軍は何故我々に?」

残された研究所スタッフの一人がそう綾川博士に尋ねる。


 「既に軍の戦車やヘリコプターが攻撃していて、何体か倒してるけど、あまり効果が薄いって事で、ならレールガンなら楽に倒せるんじゃないか? って話らしい」

綾川博士がそう答えた。


 「倒せますかね?」

 「300mm使えない現状だと、厳しいかも……」

 「そうなると、リュクシオン号とティラン号に頼る事になりますが……」

 「そうだね。ティラン号の結城くんならやってくれそうな気がする」

 「大丈夫でしょうか?」

スタッフの一人がそう尋ねるも、綾川博士はフッと笑みを零す。


 「なんだか彼は、やってくれそうな気がするよ」


 そう言って彼女は「さ、無駄口叩いてないで分析でもしよう!」と張り切って見せる。



 つづく。

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