第17話 モーツァルト
たまにわたしが早くに起きて
中宮冬子(母)の仕事が休みの時は
二人してリビングにて静座し
真ん中にポータルCDプレイヤーを置いて
互いに片方ずつイヤホンを分け合い
音楽を聴く
我が家にあるCDは一枚だけ
モーツァルト交響曲41番
父が置いていったものだ
だった一枚のCDであっても
わたしはこれを聴くことで
普遍の美を再確認することができるし
これがあるなら
明日もとりあえず生命活動を続けようと暫定の決断はできる
モーツァルトの
おそらくは本人の人格から遊離した天性は
自らの魂を蝕んだろうが
聴く者の魂は救済する
日常の生活の苦労に疲れ切った母は
イヤホンをしながら こっくりこっくり
モーツァルトの波長で夢の中に誘われている
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます