第12話 賛辞は呪い

わたしの夜の独演会で

妙な賛辞を送る者が

時にあらわれる


下心ならまだましだが

自らを隠れた才気を見出した 審美眼と悦に浸る者を見ると

堪えがたい嘔気を覚える

わたしは才気のなさを揶揄されることには耐えるが

他者に歪んだ自意識を持たせるに与することは堪えられない


賛辞は呪いと同義である

同時に呪いは賛辞である希望もある


絶えず空白と飢餓を自覚して

無為と虚しさに身を置いて

浮かない気持ちは続くけれども

反転しそれらが

明日を生活する糧になる

さればこそわたしは自らに 呪文のように言い聞かせるのだ

無為であれ 無為であれ


いつからこのような

逆説を是とする歪んだ認知に至ったのか

幸福感というものとの距離感に

絶望しないよう自ら仕向けたある種の自己改造なのか


わたしはわたしを摩耗させ侵食していくものを

動力にして今日も空回る

その果ての精神のるい痩は

容易に想定し得るのだが

止めることはできない

他の動力を わたしは知らないから

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