第10話 虚無の彼
逢瀬逢瀬 あなたと逢瀬
いつか口から放った言葉だ
虚無の目をした人がいた
訳もなく死に急ぐ人がいた
背が高くて 薄い茶髪で
少しうつむき加減で
両手をポケットに突っ込んで
毎晩 わたしの前に現れた
神妙な顔で わたしの独語を聴いた
わたしたちは
ほんの少しだけ
寄り添って
響きあって
でも触れ合うことはなく
そして唐突に 彼は姿を消した
あれはいったいなんだったのか
夢だったのかとすら思う
彼は片翼の鳥だった
羽もがれ とぼとぼ 地べたを歩いた
傷だらけの鳥だった
この感情をあらわす言葉を
わたしはまだ 持つことができないでいる
高揚と寂寥入り混じり
それは変化を嫌うわたしを
わずかに非日常の次元へいざなう
否応なしに
見上げれば夜空に シリウスきらり
あの白色の一等星を
あなたも時に見上げるかもと想像したら
わたしが知覚するこの世界に
わずかに色彩帯びる
いつかどこかで
あなたと逢瀬
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