第7話 チャンス

どうやら僕と彼女は同じ建物に住んでいるみたいである。

確かに僕たちが住んでいる建物は駅からも近く立地も良い。ただ、この結果はどうであろうか?


僕は偶然にしては出来すぎているなと思う。

その一方で、彼女と少しでも関わる機会を得られたことに喜んでいた。


「こんなこと本当にあるんだね」


「ああ…そうみたいだね」

僕は目の前の光景にあっけにとられていて少し返答が遅れた。



「君は一人暮らしなのかな?」


ふと彼女からそんな質問が投げかけられた。



「ちがうよ、家族と住んでる。さすがにこの建物で一人暮らしは広すぎるよ。」


「そっか。」

その言葉を発した彼女の表情は、どこか曇っている印象を僕に抱かせた。

不思議な感じである。彼女と出会ってまだ間もないが、時折り見せるその表情はなんなのだろうか…

僕はそのことについて聞いてみたいが何か触れてはいけない感じがしてなかなか踏み出せない。



「いとさんは一人暮らしなの??」


沈黙の時間が気まずく、僕はいつのまにか口に出していた。



彼女は少ししてから微笑んで

「そうだよ!すごいでしょ!」

とそんなことを言っていた。 



そこで僕は気づいてしまった。

今思えば、あの時も今もどうして気がついたのか説明できない。だが、分かってしまうのだ。


彼女の笑顔が偽物であることに…



「まぁ、一年とちょっとだけなんだけどね……」



彼女が何かを呟いた気がしたが、風の音と相まってよく分からかった。


念のため

「ん?何か言ってた?」

僕はそう聞き返した。


「いいや、なんでもないよ」

彼女はそんなことを言っていた。



「ならいいや。せっかく家も近いんだし改めてよろしく」

僕は軽く頭を下げてから笑った。


「うん、よろしくね、波瑠くん」




僕と彼女のこの出会いは存在してよかったのだろうか?


今後、彼女はそのようなことを何回か呟いていた。


だか僕は確信している。

この出会いは僕たちにとって運命であり、なければならないものであると……









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君の生きた証を刻みたい 常ニ寝 泰 @neteeeee

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