第3話 直感

「ありがとう。君のおかけで助かったよ」


 僕がお礼を言ったら、彼女は軽く頷いた。もう一度お礼を言おうとしたが 雨のせいか、彼女の顔をしっかりと見ることができない。だか彼女の醸し出す雰囲気はどこか落ち着いている。

 また、どこか淋しそうで冷たい感じがする。


 一方、彼女は何もなかったように、今にも歩き出そうとしていた。


 僕は慌てて彼女を呼び止めた。

「待って!いきなり名前を聞くのは失礼かもしれない。けど君さえよければ名前を教えてくれないか」


 僕の鼓動がしだいに大きくなる。それは雨の音とさえかき消すほどだ。


 沈黙の時間がながれる。それは一瞬だったかもしれない。


 僕は彼女のことを見つめている。鼓動のせいで緊張感が増してくる。


 彼女はどこか困ったような仕草をしたあと、しぶしぶと

「そうだな、私は いと って呼んでくれ」


「僕は 月島 波瑠」



 気づけば雨が止んでおり、さっきまでの緊張感はどこかへ消えてしまっていた。

 そこで、僕はやっと彼女の顔をしっかり見ることができた。


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