第8話

 うららかな春の日差しが差し込む廊下。陽気な空気。そんな中をわたしはふらふらと彷徨うように歩く。悲しいのか、寂しいのかもわからない。もしかしたらこれは苛立ちなのかもしれない。

 うまくできない自分にか、平凡に悪辣な振る舞いをする友人たちに対してなのか。そんなことを考えても無意味なのに、きっと今頃楽しそうにわたしの悪口を言っているであろう会話を想像して唇を一文字にきつく結ぶ。

 ドアの前についた。

 やっぱりノックはしない。

 からりと横に滑らせて開けば、昨日と同じように彼女は振り向いた。

 こわばった顔のわたしに気づいているのかいないのか、わたしを見た清水さんはやんわりと穏やかな顔で笑う。

「……入部希望ですか?」

 彼女の手にはシャボン玉のボトル。窓を開けて吹いていたのだろう。立派に部活中だったのだ。わたしはもう部活に顔を出す勇気はないのに。

 外に出損ねたシャボン玉が、いくつか部屋の中をただよっている。そのうちの一つがわたしの顔の近くまできて、ぱちんと割れた。

 小さく頷く。ぎこちない動きでも、わたしの肯定に清水さんは無邪気に笑い声を上げた。

「部員、初ゲット!」

 シャボン液にストローをつけるために下を向いた彼女は、多分、わたしが泣いているのには気づいていたんだと思う。

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ガラスの少女 天音 @kakudake24

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