十一の月と二十九日目


 主婦 エーリカ・ホロロム


 二日前に、コミルが亡くなった。

 不治の病に侵されてから、よく持った方だと思う。


 お祭りの日だったが、私達夫婦はどこにもいかず、コミルの様子を見守っていた。

 黒い瞳が、私達を見つめた後、ふっと閉じられた。それが最期だった。全く苦しまない様子で、穏やかな顔をしていた。


 知らせを受けて、息子二人も訪ねてきた。二人も、一緒になって、「よく頑張ったなぁ」と言いながら、背中を撫でていた。

 この瞬間、私は思い出したように、泣き出してしまった。堰を切ったように、家族全員の泣き声が響く、不思議な瞬間だった。


 お祭り中でも、教会は良く対応してくれて、ペットのお墓でコミルを埋葬してくれた。

 その後は、私自身が抜け殻のように過ごしていた。日記を書こうにも、どう言葉にすればいいのか分からず、ずっとペンを持てなかった。


 今日、学校を終えたトーチがコミルの息子のリーを、モミザがコミルの娘のエルジェを連れて訪ねてきた。私は、彼らを連れて、コミルのお墓へ行った。

 途中、花屋さんでコスモスを買った。コミルが元気だった頃、よく通っていた秋の公園で咲いていたのと同じ、橙色のコスモスだった。


 お墓の前に花を手向ける。二匹の犬は足元に座り、私達は祈りの言葉を紡いだ。

 空は突き抜けるような青空で、とても眩しく、とても美しい。風が抜けていくのが見えるかのように、空気が澄んでいる。


 あの空の上で、コミルが元気に走り回っている。そんな姿を想像していた。


                 おわり






   ***






 メモ


 とうとう、この日が来てしまった。

 私も、コミルが元気だった頃や出産した時のエーリカさんの日記を読んでいるので、とても苦しく辛い気持ちだ。


 でも、エーリカさんたち家族が一番つらいのは分かっている。日記の文字が、いつものとは比べ物にならないほど乱れていた。

 日記が途切れた時、その人にとって大きな別れの瞬間を迎えていることがある。書けなくなるのは仕方ないと思うけれど、その瞬間を読めなかったことで、私は外側なんだと感じてしまう。


 今日は、私もコミルの冥福を祈りたい。

 コミル、お疲れさま。さようなら。元気でね。


                 ノシェ

    






























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