十一の月と二十三日目


 (日記用の紙の裏側)


 宿屋「チエリのとまり木」店主 タナツ・グーゲン


 本日の夜、チェックアウトした部屋に、この紙が折り畳まれた状態で置かれていました。

 電灯で透かしてみると、中で文字が書かれているようです。恐らく、王女様へ送りたいのだろうと思うので、私が代行いたしました。


                 おわり






   ***





 

 (日記用の紙の表側)

 

 アルベルト


 急遽、この町を出ることになりました。

 ひ(この部分は二重線で打ち消されている)ジェーンは、あなたとお祭りに行ける日をとても楽しみしていただけに、非常に申し訳なく思います。


 勝手な行動を、どうぞお許しください。そして、彼女のことを、憎まないでください。


 ジェーンにとって、あなたは大切な友達でした。

 その事を、覚えていただければ幸いです。


                 おわり






 メモ


 雫が落ちた後の見えるこの紙を読んで、私も涙が溢れてしまった。

 ジェーンとアルベルトと一緒にお祭りに行けなくなってしまったことが悲しくて、同時に、ジェーンが私のことを友達だと呼んでくれたことが嬉しくて。


 アルベルトが日記を書かなかったのは、魔法が一切使えない彼の体質上、「おわり」と書いても、紙が城に飛んでこないからなんだろう。

 それでも、この紙が折られた状態で二人の部屋から見つかったのは、ジェーンには内緒で、誰かに運んでほしいと思っているからだろう。文字の筆圧が、ちょっとずつ違う。一文一文は、別の日に書いたのかもしれない。


 私は、二人がこんな夜遅くに出立しないといけないのか、その理由を知らない。でも、私は友達として、心から祈りたい。

 ジェーンとアルベルトの旅路に、幸多からんことを。


                 ノシェ






































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