十一の月と二十日目


 魔道具開発者 シィエーウ・コンスタンタン


 青い炎の蝋燭開発、十八日目。温度が高いと炎は青くなるという発見をしてから、早くも十日経った。

 またしてもというか、当然のようにというか、私は行き詰まっていた。


 蝋燭や芯の材質を変えてみたが、それでも大きな変化がない。蝋燭には使わないようなものを燃やしてみたが、上手くいかない。

 数日間、ずっと自室に閉じ籠っていたので、今日は朝から気分展開に散歩してみることにした。それなのに、何か解決の糸口はないかと、ふらふらと図書館に行ってしまう……。


 中に入ろうとした時、後ろから話しかけられた。振り返ると、小説家のセィシル先生が立っていた。

 先生も、この図書館に用事があって訪問したという。せっかくだからと、談話室でお話することになった。


 私は、先生に自分の仕事について話していた。開発に行き詰まっていると話すと、「僕も、良いトリックが思いつかない時はすごく苦しいよ」と頷いていた。

 そして先生は、こういう時は、思い切って今までとは違う角度から切り込んでみるのはどうかと提案した。「例えば、君はずっと科学的観点を見ているようなので、他の分野から分析してみるとか」……その言葉にはっとした。


 一瞬だけでも、青い炎が出た呪文を、今度は言語学的観点から分析してみる。こちらは、別の国の古い言葉を用いたものだったので、私には意味が分からないものだった。

 辞書を引きながら調べてみると、青い炎が出た呪文は、「炎」という言葉と「空気」という言葉が組み合わさってできていた。


 そこで、ただの蝋燭に、魔法で空気を送り込んでみる……すると、炎の色が青くなった。

 私は気が抜けるほどほっとして、今度は嬉しくて歓喜の声を上げてしまった。蝋燭の周りに、空気を供給していく呪文を書き込んでみると、安定して青い炎を出すようになった。


 青い炎の蝋燭ができましたと、魔道具屋さんに連絡すると、「じゃあ、次のお祭りで、大々的に売り出しましょう!」と、気の早い返事をされた。

 驚きつつ、ヒライトさんらしい、野心的な一言だなぁと感じ、私も思わず、「いいですよ!」と答えていた。さて、開発が終わっても、まだ忙しい日々は続きそうである。


                 おわり






   ***






 メモ


 シィエーウさんの青い炎を出す蝋燭、無事に出来上がってほっとした。何か大きな発見があった瞬間を見るのは、こちらもスカッとする。

 とはいっても、これから蝋燭をたくさん作らないといけないから、シィエーウさんは一休みできることは出来なさそう。本人は楽しそうだから、大丈夫みたいだけど。


 シィエーウさんは魔法のインクを開発した年に、セィシルさんは小説で世界的な賞を採ったので、二人は年末に開かれた城の大きなパーティーに招待された。二人の日記で、異なる職種ながらも、意気投合したと書かれていたけれど、その後も交流はあった様子だ。

 そう言えば、シィエーウさんを贔屓してくれる魔道具屋さんは、ジェーンとアルベルトが働いている魔道具の店主のヒライトさんだ。こうして、町の中でみんなが繋がっていくのを見ると、なんだか嬉しくなってしまう。


                 ノシェ













































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