十一の月と十日目
魔法道具開発者 シィエーウ・コンスタンタン
青い炎の出る蝋燭づくりは、完全に行き詰ってしまった。
まず、炎が青色になる理由が、まだ解明されていない。物理学に関する本を色々捲ってみたが、見つけきれなかった。
分らなくなったら、まず観察してみること。師匠にそう言われたことを思い返し、自分で理由を探してみることに決めた。
部屋を暗くして、普通の蝋燭に火を灯してみる。すると、燃える炎の蝋燭の芯に近い部分は、青色になっていることに気が付いた。
橙色の部分と青い部分、色以外には何が違うのだろうか。色々な計測器や録画機器を使って、調べてみた。
結果、青い部分は橙色の部分よりも、温度が高いことが判明した。そう言えば、前に炎の呪文を試した時に、一瞬青い部分が多い炎が見えたのも、最大火力の呪文を試した時だった。
今度は、どうやったら温度の高い炎を、安定して灯していられるかの研究になると思う。
尻尾を掴めた気分だけど、そろそろ遅くなってきたので、今日はこの辺で。
おわり
***
メモ
シィエーウさんの蝋燭開発記、ここ数日は、あまり良い成果を得られなかったのか、日記に描かれていなかったけれど、ここで大きく前進したようで、ほっとした。
炎の色には温度が関係していたなんて、全く知らずにいたので、目から鱗だった。
魔法があるお陰で、色んなことが出来るけれど、その便利さのせいで、どうしてそうなるのかを調べる研究が滞っているという論文を読んだことがある。例えば、なぜ星が空に浮かんでいるのかとか、海の底はどうなっているのかとか、匂いはどう感じ取っているのかとか。
そんな、小さな疑問を、人間は明かさずとも生きていけるのだけど、私は知りたいと思ってしまう。この呪いのせいだと思うけれど、でも、色んなものに興味を持てるのは、いい点なのかもしれない。お父様やお母様には言えないけれど……。
ノシェ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます