十一の月と五日目


 国立リアド学園中等部一年 トーチ・ユージェンド


 リーがいなくなってしまった。

 一緒に散歩している時に、近くで大きな音がしたのにびっくりしたリーが走り出し、僕は思わずリードを放してしまった。


 慌てて追いかけて、リーの名前を呼んだのだけど、全然振り返りもせずに、どんどん遠くなっていき、泣いてしまいそうになった。

 姿を見失った後も、レモレ通りを隈なく探して、ご近所さんにも訪ねて回ったけれど、誰もリーがどこに行ったのか分からない。


 その内、日が沈んでしまった。僕はまだ探したかったけれど、両親が迎えに来て、父さんに引きずられるように家へ帰った。

 リーは、一体どうしているんだろう。あいつが来てから三年、ずっと一緒だったのに。ひとりぼっちの夜が、こんなにも寂しくて、長いものだったなんて。


 落とし物をしたことを日記に書いたら、王女様が他の人の日記から、誰が拾ってくれたのかを教えてくれたことがあったらしい。

 リーのことも、誰かが見つけて、日記に書いてくれていますように。お願いします。


                    おわり






   ***






 メモ


 トーチくんは、いつも元気な少年で、学校が終わった後、いつも愛犬のリーと一緒に散歩するのが日課だった。

 そのリーがいなくなってしまうなんて。私も、胸が引き裂かれたような気持ちになる。


 リーは、中型犬で、真っ白な体と三角に耳、そしてくるんと一回転した尻尾が特徴だ。好物は、牛の干し肉で、好きな遊びはボール投げ、注射の時は耳がペタンとする……私が知っているのはこれくらい。

 トーチくんとリーが一緒に過ごした時間を、私は知らない。日記に書けないくらいの、たくさんの思い出があるだろう。


 私も、トーチくんに協力したいけれど、以前に落とし物を見つけた時と違って、生きている動物を探すのは大変だ。せめて、リーが行きそうなところが分かれば……。

 散歩の時に通る運河沿いの公園、仲良しのマイクがいるチエリ通り、あとは、生まれた家のあったロセラ通りかな……。明日の日記は、そこに住んでいる人のを中心に読んでみようと思う。


                     ノシェ

















































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る