十一の月と二日目
魔法道具開発者 シィエーウ・コンスタンタン
今日のお昼頃、ポストに新しい依頼が入っていた。
差出人は、贔屓にしてくれるおもちゃ屋さんで、内容は、青い炎が燃える蝋燭を作ってほしいというものだった。
この仕事を長くしているけれど、魔法で青い炎を出したことは一度もない。きっと、長い道のりになると思う。
でも、報酬は申し分のないものだったし、何より、子供たちが青い炎を見て驚く姿がを想像すると、わくわくしてきた。私は、引き受けますと返事を送った。
まず、色々な炎を出す呪文を試してみる。古い文献も取り寄せて、もう誰も使っていないような呪文でも、一通り唱える。
だけど、その中には、青い炎を出す呪文は無かった。根元の方が青い炎はあったけれど、全体的に見ると橙色なので、却下する。
そもそも、どうして青い炎ができるのか? ということを調べてみたが、はっきりとした理由は見つけられなくて、がっかりする。
それと同時に、高揚感が生まれる。誰もやったことのないことへの挑戦。まさしく「開発」という仕事だ。
興奮しすぎたかもしれない。
今日はこれまでにして、続きはまた別の日に。
おわり
***
メモ
シィエーウさんは、五年前に書いたものが動き出す魔法のインクを発明して、一躍時の人になった女性だった。その年の、名誉開発者に選ばれたのも覚えている。
表彰会の後のパーティーで、ちょっとお話をした。彼女は、お金や名誉ではなく、「絶対に必要ではないけれど、あったら嬉しいもの」を生み出すのが目標だと話していた。
「青い炎の蝋燭」――文字列を見ただけで、ドキドキする。
開発の大変さはあるだろうけれど、シィエーウさんはきっと叶えてくれると信じている。
ノシェ
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