第十四夜『離れぬ磁石の噺』
「さて、今宵も語りましょう」
「今回はどこまでも美しい愛の十四夜」
『離れぬ磁石の噺』
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その夜は星が煌々と輝く美しいものでした。それはこの世のものとするにはあまりに不自然なほど。赤や緑に輝く不思議な夜のことでした。二人の少女が深く深く静かな青に落ちようとしています。彼女の眼前には真下に広がるものよりも澄んだ青。不自然な空よりもさらに美しいものだと確信できるほどのそれは美しい青がありました。その青には今にも零れそうなたくさんの涙が溜まっておりました。
その美しい青の瞳を持った女性は彼女に問いかけました。
「怖いとは思いませんか?おかしいとは思いませんか?こんな関係をもってしまうなんて」
その問いかけに対して、彼女はもっと近くにいたいと言うかのように熱く、激しく抱きつきました。自ら己の控えめな胸の膨らみを押し付けるように。そして、その長いまつげに涙を伝わせて。
二人とも旗から見れば狂っていると思われるのでしょうか。きっとそうなのでしょう。そんなことは二人ともわかっています。ただ、おかしいほどに愛おしいと思ってしまったというだけのことです。真下の青を持つ金髪には椿のかんざしが挿してあり、闇夜のような黒を黒髪にはバレッタがあります。
「こんなのはおかしいことなのでしょう」
「ただ、それでも愛してしまいました」
「今世で貴女に出会えたことを嬉しく思います」
「来世はもっと笑えますように」
そんなことを口にした二人は泣いておりました。
怖くても一歩。また一歩と青へ沈む未来へ近づく最中に愛を確かめ合いました。
「私たちは本当に愛しあっています。決して忘れることなどありません。なぜなら、こんなにも素晴らしい人に出会えたのは初めてだったから」
たとえ来世で別々になろうとも、どこに産まれ落ちようとも。貴女を探して離れない。それが彼女たちの決意でした。
お別れというものはさみしい。しかし、そんなこと彼女たちにはどうでもいいのです。最期のときまで一緒に居られるのですから。今世の終わりに唇を重ね、また会えるようにと唇を重ねながら、二人は誓いました。そして、深い青へと落ちていきました。若き乙女の約束は神へと誓われ、死が二人を別つまで。そしてまた惹かれ合うことでしょう。
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「お噺はここまで」
「乙女たちのそれはそれは美しい恋物語でした」
「また明日も語りましょう。紡ぎましょう」
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