第七夜『黒骨の島の噺』

いらっしゃいましたか。では語りますかね」


「ふしぎな島について。第七夜」


『黒骨の島の噺』

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 むかしむかしの海の上。そこには一つの船がありました。乗船しているのは船長、そして五人の乗組員でした。彼らの目的は最果ての海へと行き着くこと。加えて、安息の地を見つけることでした。

 そんな航海の最中、


「船長。もう食糧がろくにありません。燃料の余裕も無いです」


乗組員たちが口を揃えて報告します。船長はどうするのが最善の手段なのか、考えます。深く深く海の底よりもふかく。考えて、仲間とともに海の藻屑になろうと決意しました。そのとき、遠くに小さな島があることに彼らは気がつきました。

 地図には書かれていない未知の島は船乗りたちにとっての宝の山です。もしかすると頭と胴体が切り離されるかもしれませんが。危険性の高い民族がいたとしても、食糧と燃料の補給のためには必要な賭けでした。その船ら小さな島に進路を定めました。

 島に着いてみると、島民たちは船の方へ一斉に身体を向けます。詳しく理解はできませんでしたが、異国の船と異国の人がやってきたのですから警戒もするでしょう。船乗りたちは驚きました。自分の倍ほどあるか無いかの身長に灰色の肌を持つ人々がそこかしこにいるのです。その中でも一際大きな人に食糧と燃料を分けて貰うことにしました。

 船乗りたちが話し掛けたのはこの島の長でした。


「旅の船乗りさんよ。そういう理由なら食糧を差し上げましょう。農業は盛んなのです」


そう言って食糧を分け与えてくれました。雰囲気のいい客間に案内をして貰い、豪勢な食事まで船乗りはご馳走になりました。


「あとは燃料か。なら、この若い衆の中から好きなのをお選びください。こいつらの黒い骨は良く燃えますから」


島の長はそう言いました。

 翌日、船乗りたちは長にたいして感謝の言葉を述べました。長はこの島の居心地が良かったのであれば嬉しいと言いました。船乗りたちは食糧と老衰で亡くなった島民の黒い骨を持ちながら船へと戻っていきます。


「島民みなで船出をお見送りいたします」


そう長は言いましたが、なにかがおかしいと感じました。それは自分以外の島民の気配が全くないことだと気がつきました。それが何を意味するのか理解するまでの刹那に火矢が突き刺さります。

 船乗りたちは船上にいます。昨夜の疲れを癒しながら、火器を使えなかった不便さに文句を言いながら島を出ていきます。


「やっぱりあの島は宝の山だったぜ」


そう言った遠くでは島が大きく燃えておりました。

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「お噺はここまで。」

「あなた様は困ったからと言って私を燃やさないでいただけますようにお願い申し上げます」

「また明日にお待ちしております」


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