第2話
トルコの理髪師は私、依共ミナトの肩から去っていった。変な友達、将門ハチコ曰く東欧経由でヴァルハラへと至ったらしい。悪い奴じゃなかったってさ。ともあれ私は視た。視えた。教科書の写真でしか見たことのない恐竜の骨格。それも動いていた。食べられかけた。ハチコはお茶でもと注いでくれたが私は早々に退散した。
「ちょっとミナト。寝るならちゃんと電気消しなさい」
「うん、はい」
「はいってあんた消しなさいよ」
「ダメダメダメ今日はダメもしかしたら明日以降もッ」
「どうしたのなんかあった」
「ママは幽霊を信じますか」
「大丈夫? 病院、開いてるかしら」
「もういいッ消すから出てって」
「ちょっと、ミナト。ちゃんと消してよね」
ダメだ。すっかり呪われた気分だ。どうしよう。まだ私十六歳。花が散っても咲き誇る無敵のジェネレーション。そうでしょなんとか言ってよ神様ホトケ様。幽霊て、ナンッッッ。勘弁してくれ。
「オハヨッございます。ミナピィ」
オ"ハヨ"〜オ"ハヨ"〜オ"ハヨ"〜オ"ハヨ"オ"ハヨ"オ"ハヨ"オ"ハヨ"オ"ハヨ"ッッミナビィイイイイッッ
「嗚呼アアアアッ視えッているッッたくさんッいるッッ嗚呼アアアア」
「え、もしかしてミナピィも亡者が。えー嬉しい。お揃いですねッ」
「ちょっとッ!!」
「どうしました? ミナピィ、もしかして怒っていらっしゃいます?」
「あんたのせいで私の華咲く十代が台無しよ! こんなことなら散髪屋肩に装備したままのがマシだったわ! もう近寄んないで!」
「そう、ですか。わかりました。ごめんなさいミナピィ。はじめて親しくなれた"人"でしたから。ちょっと舞い上がってしまいました。わたくし慣れてますから。本当にごめんなさい」
「いや、あの」
なんで私が悪いみたいな気分なのよ。いや、ここは心を鬼にせねば。オバケに振り回される人生なんてごめんなんだから。でもハチコは……ずっと、ううんダメダメダメ。私の人生は私が守らなきゃ。
ポッポー、ポッポー
「あのーさあ」
「え、ミナピィ。もうわたくしとはお話してくれないんじゃ」
「ゴメン! 私、ハチコの気持ちとか全然考えてなくてハチコだって好きで霊視出来てるわけじゃないしなんかこのままだとあんたの生き方を否定した上でエラソーに自分だけよけりゃってそんなのやっぱり私自身が納得できないっつーかそのなんだハチコ!」
「ハイッ」
「身勝手なのは承知でもっかい友達になってくださいッッ」
よっぽど嬉しかったのか、今まで寂しかったのか。慣れてるなんて強がってたけどこの子も人間だ。照れたような眩しい泣きそうな笑顔。私は思った。この方がいいに決まってる。ごめんねハチコ。
「ハイッ!」
オギャーアアアアォン恨怨辛嫉魔邪妖死痛death death dead memento moriバルバルバルバルバギボキベギブギギャォオオオウスッッ
「嗚呼 嗚呼 嗚呼」
「ミナピィ! 大好きです!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます