第50話 連絡先

 月面で、星見人(ホシミスト)の称号があるヒジリ君が、星を創造できるか検証実験をしているが、結果は思わしくない。

 ヒジリ君は頑張っているようだが、星ができることはなかった。


「アキコが星を創れるのは、星見人(ホシミスト)の称号があるからじゃないのか?」

「アルフ様、他の要因が絡んでるかもしれませんよ。例えば、魔力はどうなのです。ヒジリさんにも魔力はあるのですか?」


 アルフとライラ様がこの結果を受け、話し合いを始めていた。


「ヒジリ君も魔力は持っているようだよ。量的にはアキコと変わらないようだが___」

「そうなりますと、もっと他の要因があるのですね?」


「そうだろうが、それが何かわからないな___」

「詳細に調べるには時間が足りませんね」


「そうだな。余り遅くなってはよくないな。ヒジリ君、今日はこれくらいにしよう」


 アルフが検証実験の切り上げを言い出した。


「すみません。うまくできませんでした___」

「謝る必要はないよ。元々、アキコ以外にも星の創造ができるかの検証なのだから」


「ですが、井戸川さん以外にも、星を創れる人が必要だったんですよね」

「それはそうなんだが、アキコが星を創造できるのも、偶然の産物でしかないからな」


 まあ、やろうと思ってやったわけではないからね。

 ただ、星空が戻ればいいと思ってはいるよ。


「魔力の制限がなければ、私がどんどん作っちゃうんだけどなー」


「その、魔力の制限とはどんなもんなんだい?」

「どんなものなの、アルフ?」


 ヒジリ君に聞かれたが、そんなこと聞かれても私には魔力なんてよくわからない。 

 こんな時はアルフに丸投げだ。


「そうだね___。普通は、魔法で何かを作り出すなら、その大きさによって必要な魔力は増えていくね」

「やっぱり大きさなんですね」


「ただ、アキコの創造が普通かどうかは、検証してみないとわからないな」

「それも検証してみないとわからないんですね」


 ヒジリ君は何とも微妙な顔をしていた。


「なにぶん、初めてのことだからね」

「今度は、それの検証もしてみないとだね」


 検証することがあれば、アルフと大手を振って一緒にいられる。

 ついでに、検証の結果、星を作り放題になれば万々歳なのだが、そうはいかないだろう。


「無理しない範囲で頼むよ」

「また、目が覚めなかったら大変ですよ」


 アルフだけでなく、ライラ様も心配してくれる。

 確かに、また、寝たきりになるのは避けたいところだ。


「ということで、検証するときは、僕がいるところでね」

「わかったわ。検証する時はアルフを呼ぶから、連絡先を教えて」


 検証という、言い訳ができたので、ここぞとばかりにアルフの連絡先をゲットしようと、スマホを取り出したが、異世界人のアルフが地球のスマホを持っているわけがない。

 仮にアルフ用にスマホを手に入れられても、地球以外では使えないだろう。


 そういえば、誘拐犯がスマホのような物で連絡をとっていたが、あれは異世界のスマホではなかったのだろうか?

 あれなら地球でも使えるだろうか?


 アルフに聞いてみたが、やはり、スマホのような物だったが、地球では使えないそうだ。


 そうなると、地球と浮遊大陸との間で連絡手段がない?

 ヒジリ君曰く、電波自体は届くだろうから、大型のアンテナと中継局があればどうにかなるそうだが、それが設置されるまでにはしばらくかかりそうだ。


「あ、そうだ!アルフの覗きはどうやってるの?あれなら連絡取れるんじゃない?」

「覗きでなくて、監視ね。監視」


「覗きって、アルフさんは、そんなことやってるんですか?」

「だから、監視だってば!」


「それでどうなの?それで連絡できない?」

「あれは、監視先が固定されているからね。それに、いつも僕がモニターの前にいるとは限らないから、連絡用には不向きだね」


 あくまで監視カメラだから、携帯電話的には使えないということか。

 でも、固定電話的には使えるんじゃないかしら。


 最悪、監視カメラに映し出されている場所に、伝言の張り紙をしておけば、要件は伝わるだろうということになった。


 張り紙だと、他の人にも簡単にみられちゃうじゃない。

 アルフとプライベートな連絡先を交換したかったのに、残念!


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