第44話 調査隊1

「サガト殿下、本当にこれを着るんですか?」

「当たり前だろ、レイア。地球では、それが女騎士の正装なんだ。密かに調査に行くのに、こちらの服では目立つだろう。お前は、この任務に重要性をわかっているのか?」


 騎士である私は、今回サガト殿下の護衛として、地球に向かうことになっていた。


「それはわかっていますが、この防御力がまるで無い装備が、女騎士のものだと言われても、信じ難いのですが___」

「レイアが信じられないのも無理もないが、これを見てみろ。どれも、女騎士はこの格好をしているだろう。ビキニアーマーというそうだぞ」


 確かにサガト殿下に渡された本では、女騎士がこれと同じ装備で戦っていた。


「さっさとしろ、置いていくぞ!」

「・・・わかりました。少々お待ちください」


 これも任務だ!仕方がなく私はビキニアーマーとやらに着替えた。


「よく似合っているぞ」

「ありがとうございます___」


 この格好を褒められても、余り嬉しくないのだが・・・。


「レイア、大胆www」

「ククリ!仕方がないだろ___」


「ホボスも何か言ってあげなよwww」

「俺は別に・・・」


 ククリにからかわれて、ホボスには顔を背けられてしまった。


 サガト殿下、護衛で女騎士の私、経済学者のククリ、もう一人の護衛のホボス、この四人が今回任務で地球に向かうメンバーである。


「我々の今回の主な任務は何かわかっているか?」

「ハイ、ハーイ!現地通貨を手に入れることでーす!」


 ククリの言う通り、今回の任務は、地球のお金を手に入れることだ。

 これがないことには、今後の調査を思うように進められない。


 そのため、今回、経済学者のククリの活躍に期待したいところではあるが、彼女は任務の重要性をわかっているのだろうか?物見遊山と勘違いしていないだろうか?


「ちなみに、これが、不由美から提供された現地通貨のサンプルだ」


 サガト殿下は何種類かのコインと一枚の紙を私たちに見せた。


「その紙のような物も通貨なのですか?」

「そうだ、紙幣やお札と呼ばれ、これは千円札だな。他に、五千円札と一万円札があるそうだ」


「紙がそんなに高価だということは、文明がかなり遅れているのでしょうか?」

「レイア、そうじゃないの。紙自体が高価だというわけではないのよ。いうなれば、約束手形のような物よ」


 ククリが説明してくれるが、納得がいかない。


「でも、それなら、いくらでも印刷できてしまうじゃないか?」

「そうよ。これは、経済における錬金術よ。お陰で、地球では経済活動が活発なのよ」


「なら、我々もわざわざお金を手に入れるために地球に行かなくても、これをコピーすればいいじゃないか」

「そんなことすれば犯罪よ。お金は決められたところ以外で作っては駄目なのよ」


「それはわかっているが、元手がほとんどかからない紙でできているのだぞ、コピーすればぼろ儲けできると、誰でも考えるだろう」

「コピーしただけでは使えないように、様々な偽造対策がされているそうだぞ」


 サガト殿下がそれを知っているということは、コピーできないか不由美様に確認したのだろう。

 つまり、考えることは皆同じということだ。


「納得したか?それでは行こう!」


 私たちは、王子に続いてゲートを潜ったのだった。


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