第42話 説明

 ファミレスの席に座り直すと、私たちは、ヒジリ君に事の全容を話し始めた。

 ヒジリ君はとても信じられないといった顔であったが、それでも、途中で帰ってしまうことはなかった。

 最初に魔法を見せたのが、功を奏したのだろう。


「つまり、あの、わけのわからない月は井戸川さんが創り出した物だと?!」

「どうも、そうみたいなのよね___」


「そして、俺にも井戸川さんと同じ事ができる可能性がある?」

「アルフの考えだと、星見人(ホシミスト)の称号が関係しているみたいなの」


「星見人(ホシミスト)の称号ね___。俺にもそれがあるんだ___」

「それは、僕が鑑定魔法で確認したから間違いない」


 アルフがドリアを食べながら太鼓判を押す。

 鑑定魔法に頼るまでもなく、話を聞く限り間違いないと私も思う。


「鑑定魔法なんてものまであるのか___。まあ、異世界なら普通か___」

「それで、ヒジリ君にも、本当に星が作れるか、検証実験に協力してもらいたいんだ」


「うーん。興味はあるけど、十日も寝込むのはちょっと勘弁して欲しいかな___」

「その辺は、創り出す星の大きさを加減すれば大丈夫だと思う」


「大きさを加減しろと言われても、大抵の星が月よりデカイだろ?」

「そこは、流星とか、小惑星とかあるでしょ」


 既に流星を創ったことがある私が、偉そうに助言する。


「ああ、流星もありなのか。なら平気だな」

「じゃあ、協力してもらえるんだね?」


「できる範囲で協力します」

「ありがとう。じゃあ、これを食べ終わったら早速___」


「ちょっと待って!私、そろそろ、病院に戻らないと、流石にやばいわ」


 夕方になれば、不由美が学校を終わって、様子を見に来るだろう。


「そうね。戻った方がいいわね」


 ライラ様も同じ考えだ。


「そういえば、病院を抜け出して来たと言ってたっけ」

「もう、なんともないんだけどね」


「十日も目を覚まさなかった上に、記憶がないことになっているんですから、仕方がありません」

「まあ、そうですね・・・」


 ライラ様は目覚めてすぐ、記憶がない振りをしたことを根に持っているようだ。


「記憶がないのか?」


 ヒジリ君が心配そうに私の方を見て確認する。


「いや、フリよ、フリ。質問攻めにされないために」

「そういうことか。星を創る代償に記憶がなくなるとか嫌だからな」


 なぁーんだぁー。私のことを心配してくれたのかと思ったら、自分の心配か。

 いいの!私にはアルフがいるから。___別に恋人でも、なんでもないけど!


「それじゃあ、検証実験は明日にしよう」

「わかりました」


「そんな安請け合いして、学校はどうするのよ?」

「またサボるよ」


「それは、あまりよろしくないな。では、明日の夜にしよう」

「夜ですか?」


「夜ではまずいか?」

「いえ、俺は全然、大丈夫ですが___」


 チラリとこちらを見たから、私の方が大丈夫か気になったのだろう。

 もしかしたら、女の子を夜連れ出してはいけないと考えているのだろうか?

 案外、女性に過保護?


「私も夜がいいと思うわ」

「そうね。また、病院を抜け出すのでしょう?看護師が巡回に来ない時間なら、夜の方がお見舞いに来る人の心配をしなくていいわ」


「それじゃあ、明日の夜に」

「わかりました。それで、具体的に何時ごろ、どこに行けばいいでしょう?」


 ヒジリ君のことも、アルフが家まで迎えに行くようだ。

 転移魔法で行けば、時間はかからない。


 アルフがドリアを食べ終わると、私とライラ様は病院に戻った。

 既に、不由美が来ていて、どこに行っていたか聞かれたが、二人で散歩をしていたとシラを切り通した。


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