第37話 プラネタリウム

 私以外の星見人(ホシミスト)を探すため、天体望遠鏡の専門店に来てみたが、覗き魔に占領されていて、不発に終わった。

 そのまま見張っていても仕方ないので、私たちは次の候補地に転移した。


「この丸いドームは何ですの?」

「これは、プラネタリウムといって、星空を擬似的に見せてくれる施設です」


「星空を見られるのか?それは興味深い」

「まずは、中を見てみましょうよ!」


 アルフとライラ様は興味津々な様子だ。

 私も久しぶりに見てみたくなったので、まずはゆっくりとプラネタリウムの鑑賞をすることにした。


 のだが、二人は日本のお金を持っていない。

 三人分のチッケト代を払わされた私のお財布は、かなり軽くなってしまった。


 しまったー。アルフと二人でデートするとしても、全部私もちじゃん。

 どうにか金銭対策を考えねば___。

 あの、光る魔石、どうにか現金化できないかしら?


 そうだ、何も、日本で、デートをする必要はないのよ。

 向こうの大陸なら、全てアルフ持ちになるわ。

 でも、それだと、一緒に出かける理由がないか・・・。

 街を見て回りたいと言ったら、連れて行ってくれるかしら?


 上映が始まるまで、三人で館内の展示を見る。

 アルフとライラ様には初めて見るものばかりなので、私は質問攻めだ。


 上映が始まる時間になり、入場し、上映中は声を出さないように二人に注意して椅子に座る。

 それでも、二人は上映中に感動の声を漏らしていた。


「あれが星空というものなのか!アキコがこだわるのもわかった気がする」

「本当に感動的でしたわ。あれが、夜空を覆うのでしょう。本物を見てみたいわ」


 二人には、大変大好評だったようだ。

 星空に興味を持つ人が増えるのはありがたい。

 だが、ここに来た、本来の目的はそれではない。


「アルフ、星空に興味を持ってくれるのは嬉しいのだけど、星見人(ホシミスト)を探すの忘れてない?」

「おっと、そうだった。鑑定、鑑定っと」


「でも、男女のカップルばかりね___」


 ライラ様の言う通りだった。このリア充どもめ。爆発しろ。


「うーん。見当たらないね」


 アルフから案の定の言葉が漏れる。

 この、ニワカが!プラネタリウムは暗闇でイチャコラする場所じゃないんだぞ!

 本当なら、私もアルフと二人でイチャコラするつもりでいたのだが、それは棚に上げる。


「あれ?井戸川さんじゃないか!」


 カップルに不当な怒りをぶつけていた私の背中に、声をかける者がいた。

 振り返ると、どこかで見たことのある男子生徒が立っていた。


「ええと、聖(セイ)くん?」

「ヒジリ、だから。同じクラスなんだから、間違えないでくれよ」


「嫌だなー。軽いジョークじゃない。^^;」

「本当かなー?まあ、いいけど。それより、病気で休んでたんじゃないのか?」


「ああ、入院してるんだけどね。抜け出してきちゃった」

「きちゃったって、大丈夫なのか?」


「体調は問題ないから大丈夫、それに、お目付役も一緒だし___」


 私は、アルフとライラ様を指差す。


「あのイケメンと美人のカップル、知り合いなのか?」

「カップルではないわよ!」


「そうなのか?なにも、むきにならなくてもいいじゃないか」

「むきになんて、なってないから!」


 そういえば、アルフとライラ様って、実は叔父と姪なのよね。

 それって結婚できない、ということじゃないかしら?

 でも、異世界だとその辺の常識も違うのかしら・・・。


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