第36話 天体望遠鏡

 私たちが転移した先は、都内の天体望遠鏡専門店の前だった。

 ここなら、天文マニアしか来ないだろう。

 ただ、星がなくなってしまった今、果たして望遠鏡を買いに来る人がいるかは、賭けでしかない。


 と、思っていたのだが。

 予想に反して、店は大混雑だった。


 何事だ?!普段だって、こんなに混むことはないだろうに。閉店セールか?


 とりあえず、店にいる客をアルフに片っ端から鑑定してもらった。

 しかし、星見人(ホシミスト)の称号を持つ者は誰もいなかった。


 どういうこと?


 私は、店に入ると、店員を掴まえて聞いてみた。


「何でこんなに混んでるの?」

「それが、皆さん宇宙人を見たいそうで___」


 宇宙人?そういえば、まだ、地球が召喚された事実をみんな知らないんだった。

 それならば、あの浮遊大陸を見て、思いつくのは宇宙人だろう。


 そして、その宇宙人が、目と鼻の先に暮らしている。

 そうか、こいつら皆んな、覗きのために望遠鏡を求めていたのか。


 私は、同類にされては困るので、早々に店を出た。


「何かわかりましたか?」

「こいつら皆んな、アルフと一緒で、覗き魔だった」

「僕は覗き魔ではないぞ」


「いつも私のこと覗いてるじゃない」

「アルフ様、そんなことをされているのですか?」

「あれは、監視だ、監視!」


「女性のことが気になるなら、私のことを覗いてくださればよろしいのに___」

「ライラ様は覗かれても平気なのですか?」


「アルフ様なら平気よ」


 私は、どうだろう。最初は嫌だったけど、最近はそれ程嫌でもないかも?

 それが、慣れなのか、恋心によるものなのか、まだわからない___。


「地球では、覗きは望遠鏡でするものなのか?」

「監視カメラはあるわよ。この人たちが覗きたいのは、浮遊大陸の様子よ。そこまで、監視カメラを設置に行けないでしょ」


「そうだな、現状飛んでいこうと思ったら大変だからな。特に、あの、真空結界は厄介だ。簡単に飛んでいけると思っていたが、そうもいかなくなった」

「それですと、ゲートの重要性が増しますわね」


「そうなってしまうな」

「ゲートっていくつも作れないの?」


「作るのは簡単なんだが、一度に使える数に制限がある。現状、これ以上増やすことはできない。地球と大陸の間にゲートを増やそうと思ったら、現在使っている物を取り外して、設置し直すしかない」


 テレビのチャンネル数が決まっているみたいなものかしら?


「どうします?ここで見張っていても無理そうですよ」

「そうだな」


 ライラ様とアルフは諦めてしまったようだ。


「任せて置いて、まだ次の場所があるから!」


 私は、アルフにまたスマホの地図を見せ、そこに転移した。


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