第35話 バレる

 病院の屋上までアルフと転移し、明日はお昼を食べたらまたここで、と約束をして別れる。

 明日はアルフとデートだ、と浮かれながら病室に戻ると、ライラ様が腕組みをして待っていた。


「どこに行かれていましたの?」

「お屋上で、月を見ていました___」


「そう。戻られるのが遅いので、心配になり、あちこち探して回ったのですが・・・」

「それは、すみませんでした」


「もちろん、屋上も隈なく探しましたよ。隈なく!」

「それは___。きっと、途中でトイレに行ったので、すれ違ってしまったのですね」


「ちょっと失礼」


 そう言って、ライラ様は私の服の匂いを嗅ぎます。


「あの・・・、何を?」

「アルフ様の匂いがしますわ!」


 そんなことわかるんかい!異世界人の嗅覚は犬並か?!


「な、な、何のことでしょう?」

「とぼけても無駄ですよ。アルフ様と転移でどこかに行っていたでしょう!」


「そ、そ、そんなことありませんよ___」

「今から、四六時中目を離しませんからね!」


「それは、散歩に行く時もですか?」

「もちろんです。病室から出る時は、腰紐をつけさせてもらいます」


「それって、犯罪者扱いなのでは・・・」

「嘘を吐く人は犯罪者です!」


 これでは、明日アルフとデートに行くのは不可能だ。

 ここは、正直に話して、明日アルフと出かける許可をもらおう。


 ということで、ライラ様に全て打ち明けた。

 アルフに話さず、月を創造したことをばらしてしまうのはまずいと思ったが、記憶がない設定はアルフと出かけてしまった事により、無理になってしまった。

 この後、嘘を重ねると、ライラ様が本気で怒りかねない。


 それに、明日出かける理由が、デートでなく、星見人(ホシミスト)を探すことだと納得してもらうには、星を創造する力のことを話さないわけにはいかなかった。


「わかりました。明日のお昼過ぎですね。いいでしょう。許可します」

「やったー!」


 案外、簡単に許可が降りた。


 そして、翌日、お昼過ぎ、私たちは病院の屋上にいた。


「ライラ樣、お見送りありがとうございます」

「アキコ、何を言っているの?もちろん、私もついて行くわよ」


「ライラも行くのか?」

「はい、アルフ様!ご一緒させていただきます。アルフ様とお出かけなんていつぶりかしら。私、楽しみで、昨夜はなかなか眠れませんでした!」


「それなら、今からお昼寝をされたらどうでしょう。睡眠不足はお肌の大敵ですよ。その間に、私たち二人で行ってきますから」

「あら、アキコ、言うようになったじゃない!でも、私はアキコから目を離すわけにはいかないわ」


 いつの間にか、ライラ様は、私のことを呼び捨てにするようになっていた。


「あー。それで、アキコ。どこに行けば星見人が見つかりそうなんだ?」

「まずは、ここです!」


 私は、アルフにスマホの地図を見せた。


「ここだな。わかった。じゃあ掴まってくれ」

「はい」

「アルフ様失礼しますわ」


 私が右腕、ライラ様が左腕に掴まった。


「二人とも、そんなに強く掴まらなくても大丈夫だぞ」

「いえ、これで大丈夫です」

「久しぶりの転移で少し怖いのです」


「はあー。じゃあ、転移するぞ。転移!」


 結局、なし崩し的に三人で行くことになったのだった。


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