第32話 月面
私とアルフは、病院の屋上から月面に転移した。
この月は、私が作り出してしまった物らしいのだが、果たして本物と同じような重力があるかどうか確かめるためだ。
到着早々、私は月面でジャンプを繰り返す。
「なにをやっているんだ?」
「重力があるか確かめてるのよ」
本来であれば月の重力は地球の六分の一。ここでジャンプすれば普段より高く飛べるはずである。
「普段と変わらないわね___」
この世界には、重力がない代わりに、下方向に沈力が働いているらしい。
ジャンプできる高さが普段と変わらないということは、月面上でも、重力はなく、沈力が働いているということだろう。
それに、重力と沈力、両方働いているとすれば、体が少しは重く感じるはずだ。
「予想通りの結果ね」
「なにが予想通りなんだ?」
「この月には地球とは違って重力がないわ。つまり、召喚された物ではなく、こちらで作られた物ね」
あれ、でも大陸も昔召喚された物よね?ああ、地表だけだと、重力が気になる程でもないのか___。
いや、それだと地球では、場所によって、重力と沈力が打ち消しあって、重力を感じなくなってしまたり、逆に二倍に感じたりしてしまうはず。
そんなことになっていれば、今も大騒ぎしているはずだ。
そんな話は聞いていいない。
地球では沈力が働いていないと考えるべきだ。
だけど、昔召喚された大陸では沈力が働いている。
召喚が理由ではないということか?
召喚が理由なら、私にも沈力が働かないはずだものね。
考えてもわからないな。
そんな時にはアルフに聞いてみよう。
ということで、アルフに聞いてみた。
「僕にもわからないよ。でも地球は様々な結界で守られているのは確かだから、沈力を防ぐ結界があるんじゃないかな?」
「そうかな?それならいいけど、ないかご都合主義な気がするわ」
でも、これだと、月が召喚された物ではなく、私が創造した物だと証明できないわね。
まあ、いいか。私が作った物だと確定しなくても。
その方が、気が楽になる気がする。
「それで、気が済んだのかい?」
「あ、そうだ。他にもいくつか確認したいことはあるんだけど___。そこから先、石が光ってるわね」
「月の半分近くが光ってたからね」
「これ、どうして光ってるのかしら?光を反射しているわけではなく、燃えているわけでもないわよね?まさか、放射能!」
「これは、魔力で光っているんだろうね。光る魔石だね。これだけ有れば、大金持ちになれるな」
「光る魔石ねェー。これ、売れるんだ。勝手に持っていったら怒られるかな?」
そして売ったお金で天体望遠鏡を買うんだ。
大口径の屈折赤道義で、勿論、自動追尾、自動導入機能付き。
レンズはEDかフローライトで___。
あぁー。夢が広がるわ!
はっ!しまった!!それで見る星が無いんだった___。
「他人の物を勝手に持っていったら駄目だけど、これはアキコの物だろ。問題ないんじゃないか?」
「え?これ、私の物なの?」
捕らぬ狸の皮算用だと思っていたら、アルフからとんでもないことを言われたのだった。
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