第29話 神

 魔王城からレムリア大陸に向けて、飛行船で夜空を飛んでいる。

 これが、星空だったら、凄くロマンチックだっただろうに、その世界には星がない。

 まったく、残念な世界だ。


 せめてもの救いは、アルフと二人きりで会話できることだろうか___。

 それが、わかっているのか?アルフは転移魔法を使わずに、飛行船を飛ばしてくれている。

 単に、疑問に思ったことを解消したいだけかもしれないが・・・。


「大体、想像しただけで、星を創造できるのは、神様くらいのものよ」

「神様?それは地球にいるのか?」


 さっきまで、がっくりしていたのに、急に元気に、私の話に食いついた。


「いる、というのかな?もしかして、こっちの世界には神様は、いないの?」

「聞いたことないが?」


「そうかー、ということは、宗教もないんだ」

「宗教?」


「あれ、でも、聖女はいるんだよね?」

「今はいないが、いたことはある」


「それ、神様とか宗教は関係ないの?」

「聖女は、癒しの魔法が使える者のことだな」


 そうなると、地球に聖女はいないと思うけど?どうなのだろう?


「地球に魔法が使える者はいないはずだけど、召喚された拍子に使えるようになるもの?」

「称号が有れば使えるようになるかもしれない。だからこそ、期待したのだが・・・」


 ああ、称号、星見人(ホシミスト)ね。


「だけど、切り札と言ったのは魔王よね。他に何かあるのかしら?」

「魔王も、アキコの称号を見て、何かあると思ったんだろ。それが何かまではわからなくても」


「私、魔王にも視姦されてたの?」

「鑑定ね。鑑定!」


 あの、背中がゾクゾクするのがそうだったのだろうか?

 あれ?だとすると・・・。


「アルフ、私、好色王にも視姦されたかもしれないんだけど___」

「だから、鑑定だって。それと、本人の前で好色王なんていわないでよ。首が飛ぶよ!」


 あれ、これは冗談ではないやつだ。うっかり言わないように気をつけないと。


「だが、そうなると、国王陛下も勘違いしている可能性があるな。だとすると、ゲートに関係なく家に帰してもらえない可能性が高いな___」


「えー。それは困るよ。私、受験生だし。学校に行かないと」


 行きたいわけではないが、行けないと困る。


「話は戻るけど、神様なら星を創造できるのだろ?」

「それは想像の話で、確かめられたことじゃないの」


「つまり、神様は想像上の人物ということか?」

「人物でなく、神様は神様なんだけど、姿に決まりはないの。人だったり、動物だったり、物だったり、ただの光だったり」


「何とも掴み所がないな」

「神様を、知らない人に教えるのは難しいよ」


 信仰というものが分からないと、神様がどんなものかわからないかもしれない。

 そうだ、星座の神話なら余り信仰とか関係ないな。

 私は、星座の神話をいくつかアルフに聞かせた。


「神様というのは、スクレムリア国王みたいだな___」


 あー。そうね。そういう感想になるよねー。


 星座の神話を話していたら、なんだか眠くなってきた。

 私は飛行船のシートに座ったまま眠りについてしまった。


 目を覚ますと、そこはベッドの中だった。

 自分でベッドに入った覚えはないので、アルフが運んでくれたのだろう。

 お姫様抱っこかな?

 アルフだと魔法で転送させた可能性の方が高いか___。

 どちらにしろ、寝ていたのだからわからないが、お姫様抱っこで運ばれていたら嬉しいな。

 しかし、私の頭は、いつの間にこんな乙女脳になってしまったのだろう。

 これも、召喚の影響だろうか?


 しかし、ここはどこだ?

 自分の部屋のベッドでないことは確かだ。

 案内された王宮の寝室は、もっと豪華だったし、ベッドもふかふかしていた。

 このベッドはどちらかというと硬めだ。

 アルフの隠れ家かもしれない。

 知らない間に朝チュンしてしまったのだろうか?!


 恥ずかしくなって、手で顔を覆い隠そうとして初めて気づいた。

 腕に点滴が繋がっている。


 ここは病室?


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