第27話 幻の大陸

 私たちは、慰謝料代わりに大粒の宝石が付いたペンダントをせしめ、飛行船でアトランティス大陸を離れた。


「そういえば、この大陸、アトランティス大陸というのね___」

「それがどうかしたのか?」


「もしかして、ムー大陸とか、パシフィス大陸とかもある?」

「あるけど、よく知ってるな?」


 そういえば、レムリア大陸もそうだったわね。

 なぜ、今まで気づかなかったのだろう。


「レムリア大陸も含めて、それらって、地球で、失われた大陸とか、幻の大陸とか呼ばれているのよ」

「ああ、なるほど。地球でも名前は残されていたんだな」


「て、ことは、やっぱり、元々は地球にあったの?」

「そうだな。歴代の大賢者が召喚したことが記録として残っている」


 そういうことかー!

 だとすると、ここの人たちは同じ地球人の子孫ということ?

 どおりで見た目が変わらないわけだ。

 そうなると、エルフとかいないのかな?

 でも、魔法があるのだから、独自に進化した可能性はあるか?


「ねえ、こちらにはエルフとかいないの?」

「エルフ?大賢者はエルフの子孫だとされているが」


「え?アルフはエルフなの?エロフじゃないわよ?!」

「誰がエロフだ!」


「だって、覗きが趣味だし、エルフだという割には耳が尖ってないし」

「まあ、言われているだけで、本当かどうか分からん」


 あれ、そうなると、殺されたお母さんがエルフだったのかしら?あ、好色王がエルフの可能性もあるのか?それこそエロフだな!でも、これ、聞けないよね。


「話を戻すけど、昔の大賢者は、なんで大陸を召喚したの?やっぱり勇者関係?」

「単純に住む場所が必要だったか、星を作る材料として召喚したんだろ」


「住む場所か・・・。大陸を召喚する前はなにもなかったの?」

「そうだな。この世界は、もともと最初の大賢者の亜空間ルームだったと伝えられている」


「亜空間ルーム?異世界ではないの?」

「異世界とは違うな。同じ世界の異次元だな」


「違いがよくわからないんだけど?」

「決定的な違いは、異世界は一方通行で、異次元は双方向だな」


「余計わからなくなった!」

「つまり、異世界はたくさんあるが、序列となる界位が決まっていて、上の界位から下の界位には行けるが、下の界位から上の界位にはいけない一方通行なんだ。

 それに対して、異次元は、同じ世界にある、次元がずれた空間で、魔法によって双方向に行き来ができるんだ」


「・・・亜空間ルームって、無限なの?」

「おい!今、理解を諦めただろ」


「難しい話はもういいよ。それで、無限なの?有限なの?」

「基本、有限だ。だが、裏技として、物を入れると、その分空間を拡張するように設定することもできる」


「壁はあるけど、物を入れただけ膨らむのね」

「この世界がそうだといわれている」


「この世界は有限なの?じゃあ、真っ直ぐ進めばどこかに壁があるの?」

「いや、真っ直ぐ進み続ければ、反対側から戻ってくる」


「なにそれ?」

「たとえば、大陸から物を落とすと、何年か後には上から落ちてくる」


 大きく円を描いて戻ってくるのだろうか?

 地球上を真っ直ぐ歩いていけば、また元の場所に戻る。

 飛ぶことを知らなければ、それは真実だ。


 アルフにとって、閉じた空間であることは間違いない。


 だが待てよ。最初の大賢者は異世界から来た地球人じゃないよな。

 それがエルフだったのか?


 それに、ここが亜空間ルームだったとしたら、元の空間があるのでは?

 そこはエルフの国で、もしかして、ちゃんと星空もあるかも!


「ねえ。ここが亜空間ルームだったとしたら、元の空間もあるのよね?」

「その可能性はあるが、現時点で見つかってないな」


「見つかってないじゃなくて、見つけなさいよ!!私は星が見たいのよ!!」

「そう言われてもな・・・」


 アルフは困り果てていたが、初めに文句を言ってやろうと思っていたのを思い出してしまった。

 この際だから言いたいことをぶつけてやることにした。


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