第26話 魔王2
妻のセリーヌが浮気をしていることは、最初から知っていた。
アルフが浮気相手の子供であることも。
それでも、そばにいて欲しかった。別れたくなかった。愛していた。
年に一度、旅行先で密会するくらいなら、と、大目に見ていた。
だが、それがよくなかった。
今となっては、如何ともし難いが、外に出さずの閉じ込めておくべきだった。
それは無理でも、少なくとも、監視を付けるべきだったのだ。
野放しにしておいたばかりに、国内の政敵に、その情報が漏れたのだ。
それも、会っていたのが、敵国の国王となれば、ただの、スキャンダルではすまない。
明らかに国家反逆罪だ。
このままいけば、セリーヌだけでなく、一族郎党全員打首、お家お取り潰しだ。
セリーヌは俺に懇願した。
「どうか、私をあなたの手で殺してください。反逆者としてではなく、ただのふしだらな女として」
反逆者として処刑されるのでなく、ただの浮気者として俺に殺されることにより、家族の命乞いをしたのだ。
俺は、セリーヌの最後の想いに応えてやることしかできなかった。
どのみち、セリーヌの処刑は避けることができない。
息子も一緒に送ってやるべきか迷ったが、迷った隙に逃げやがった。
まあ、あいつなら自分一人でもなんとかやれるだろ。
それだけのことは教えてきたつもりだ。
あれから、もう、十年以上の歳月が流れていた。
珍しく、あいつが来たかと思えば、女を連れてきた。
それも、深夜の寝室にだ。
結婚するのかと、聞いたが、話を逸らされてしまった。
女の様子からは、それらしい雰囲気がある。
祝いに、ペンダントをくれてやった。
肌身離さずつけていた、セリーヌとペアーで作ったペンダントだ。
セリーヌの分は、形見として、あいつが持っているはずだ。
今度はちゃんと、ペアーとして役立ててほしいものだ。
俺は、胸に手を当てるが、そこにもうペンダントはない。
俺も踏ん切りをつけて前に進むとしよう。
まずは、せっつかれている新しい妃を迎えなければな___。
そうだ、どうせだから、異世界人から妃を選ぼう。
下手なしがらみがなくて、いいだろう。
「おい。大陸を、召喚された星に向かわせろ!」
「魔王様、そういたしますとレムリア王国と対峙することになりますが」
「星を挟んで、レムリアの反対側に着けろ。そうすれば完全に死角になる」
「かしこまりました。ただちに移動を開始しさせます」
よし、移動にはしばらく時間がかかるが、その間に、少しのんびりするとしよう。
今日は、久しぶりに気分がいい。
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