第25話 魔王城

「ここはベッドルーム?」

「誰だ?!」


 私の声に反応して、ベッドに寝ていた人が起き出した。


「なんだ、お前か___。この部屋にも転移防止結界が張ってあるはずなんだが?」

「同じ結界を何重に張っても、一度突破してしまえば意味がないよ」


 アルフのドヤ顔来ましたーー。


「普通、それでも時間稼ぎになるのだがな___。それで、何しに来た。ん?結婚の報告か?」


 キャー!結婚ですって。

 ちょっと待って!まずは、お付き合いからよろしくお願いします。


 私は、両手で頬を挟んで体をくねらせる。

 いや、落ち着こう。私はそういうキャラじゃない。

 こういうのは、どちらかと言えば、不由美向けだ。


「慰謝料の取り立てにだ」


 アルフは起きてきた男に一枚の紙を差し出す。

 この人が魔王なのだろうか?角や羽が生えているわけではない。普通の人間に見える。

 ただ、目つきは険しい。


「慰謝料?なになに、攫われたことによる精神的苦痛に対する慰謝料?なんだこれは?」

「見ての通りだ、彼女を攫うように命令しただろ!」


「ああ、こいつが異世界人か?」

「彼女は、勇者でも、聖女でも、その関係者でもない。ただの女子高生だ!」


「ただの女子高生?」

「見ればわかるだろ!」


 魔王にジロジロと舐めるように見られ、私は背筋がぞくりとする。


「ただの女子高生というのは、変わった格好をしているのだな?」


 しまったー!パジャマ代わりのスウェット上下だった。

 だって、直前までベッドで寝てたんだから。


「それにしても、面妖な」


 面妖?!けったいの次は、面妖なの?そりゃ、グダグダの格好だけどさ!


「それがお前の切り札か?」

「切り札?」


「まあ、よい。慰謝料だったな___」


 魔王は首に下げていた、大きな宝石のついたペンダントを引き千切って、私に投げてよこした。


「これは?」


 私は、訳が分からず、魔王に尋ねてしまう。


「それを売れば慰謝料以上にはなるだろう」


「いいんですか?」

「構わん。売るなり、自分で使うなり、好きにすればいい」


「それじゃあいただきます」


 私は一応、頭を下げた。


「念のために言っておくけど、これ以上彼女に手を出さないでください。次は慰謝料だけでは済みませんよ」


 アルフは魔王に釘を刺してくれた。


「ああ、わかった、お前の物には手を出さない。約束しよう」


 これで、今後の私の安全は保障されたのだろうか?

 それにしても、アルフの物って、思わず顔がにやけそうになってしまった。


「じゃあ、用は済んだし、帰るよ」

「ちょっと待て、お前は宇宙を手に入れるつもりか?」


「宇宙?僕はそのつもりはないけど・・・」

「そうか、星を召喚しておきながら、残念だ___」


 もしかして、魔王は宇宙を手に入れるつもりなのだろうか?なら、魔王についた方がいいかな___。

 宇宙が手に入れば、天体観望できるようになるだろうし。


「話はそれだけか?じゃあな!行くぞ」


 私が魔王につこうか考えたのが伝わったのだろうか?

 アルフは私の腕を掴むと、ぶっきらぼうな態度で、転移した。


 異空間から出した飛行船に戻ると、今度はブースターを使って、アトランティス大陸を離脱する。

 あれがさっきまでいた魔王城か?

 来た時とは違い、緊急事態の灯りで照らされた白亜の城が輝いていた。


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