第24話 飛行船?

 アルフは魔王城への出発を宣言すると、夜の遊覧飛行は終わりとばかりに、すぐさま飛行船を転移させた。

 はあー。もっとゆっくりアルフと夜の遊覧飛行をしていたかったのにな。

 私の気持ちなど、アルフに全く伝わっていないのだろう。


「あれが、魔王が住む魔王城のあるアトランティス大陸だよ」


 次の瞬間、目に前には巨大な大陸が浮いていた。

 夜だからだろうか?その巨大な黒い影は、なんとも不気味である。

 もう、このまま慰謝料なんていらないから、帰りたくなってきた。


「これからどうするの?転移で魔王の所に行くの?」

「最終的にはそうなるけど、ここからじゃ無理なんだ」


「無理なの?なら、アトランティス大陸も見たし、もう帰らない?」

「何言ってんの?見学に来たわけじゃないんだよ」


 いや、もう、見学だけでお腹いっぱいです。

 どうか、帰らせてください。


「でも、転移できないんでしょ?」

「ここからはね。流石に僕の転移を警戒して、大陸全体を転移防止結界で囲っているんだ」


「転移を防ぐ方法があったの?」


 王宮でも構わず転移魔法を使っていたから、そんなものはないのかと思っていた。


「まあ、一度突破してしまえば、次からは妨げにならないけどね」


「突破できるものなの?」

「時間が有れば、どんなものでも解析できるからね」


 それって、結界の意味があるの?

 だから、王宮でも構わず転移していたんだ。


「だけど、今日は時間がないから強行突破といくよ!」


「強行突破って?」

「危ないから、シートベルトをしっかり締めてね。行くよー。ブースター全開!」


 答えの代わりに、私は、急加速によって座っていたシートに押し付けられた。


「グッェー!ブースターってぇー?」

「この上に大きなのが付いてただろ」


「あれってぇー、気球じゃなかったノォー!」


 私が飛行船だと思っていたのは、むしろロケットだった。

 浮力を得るための気球だと思っていた物が、推進力を得るためのブースターロケットだったのだ。


 飛行船はどんどんと加速していく。


「そろそろ結界と衝突するぞ」

「衝突って、大丈夫なの?」


「大丈夫、大丈夫。物理結界ではないから、少し衝撃があるくらいだ」


 言われてすぐに、アルフの言った通り、少し船体が揺れた。


「これで突破したぞ。あそこに見えるのが魔王城だ、それじゃあ、魔王の所に転移する」

「この飛行船はどうするの?」


「転移したと同時に異空間に収納するから心配ない。捕まって」


 ノロノロしていたら、敵から攻撃を受けるかもしれない。

 その前に転移してしまった方がいい。

 私がシートベルトをしたままアルフの腕を掴むと、すぐさまアルフは転移した。


 次の瞬間、私達は魔王城の魔王の寝室にいた。


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