第21話 国王1
アルフの奴、勇者召喚を命じたら、勇者の住む星ごと召喚しおった。
おまけに召喚した星までのゲートまで用意して、後はこちら任せとか、我の仕事を増やすだけ増やして姿を眩ませおって、とんでもない奴だ。
これからどうしたものかと考えている最中に、第一異世界人がゲートを越えてやって来てしまった。
こちらの準備が済んでいないのに困ったことになりおった。
やって来たのは、アキコという自称ただの女子高生だったが、鑑定魔法で確認してみた結果、勇者ではなかったが、星見人の称号を持っておった。
星見人?聞いたこともない、けったいな称号だ。
とりあえず、年齢の近い孫娘のライラに面倒を見させて、様子を見ることにした。
昼食を一緒に取りながら、召喚された星のことを聞いたのだが、だいぶこちらと様子が違うようだ。
調査団を派遣する必要があるだろうが、まずは事前調査が必要だろう。
我は、第十八王子のサガトを呼び出す。
「サガト、お前に、地球へ調査団を派遣するための事前調査に行ってもらう」
「地球とは、召喚された、あの星の名前ですね?」
「その通りだ、お前にはとりあえず、ゲートを出てすぐにあるであろう、第一異世界人アキコの自宅の調査をしてもらう」
「家に入ってよろしいので?」
「本来ならうまくないが、緊急事態だ。それに、アキコが先にこちらに不法侵入している。それに対する身元確認のための捜査だということにする」
「犯罪捜査ということで、よろしいのですか?」
「いや、あくまで身元の確認をするだけということにする。であるから、家の物には手を付けるな」
「畏まりました」
「できれば、地球の服装と通貨、それに治安がどうなっているかを優先で調べてくれ。それと、アキコの家族が戻ってくるかもしれない。可能であればこちらに連れて来て欲しい」
「可能で有れば、でよろしいのですか?」
「無理強いはするな。招待客として招いてくれ」
「拒否された場合にはどういたしましょう?」
「その時は、監視を付けておいてくれ。いずれにせよ、事を荒立てないように、細心の注意をするように」
「畏まりました。では、行って参ります」
サガトは、ゲートを潜ってアキコの自宅に向かった。
後は、サガトの報告待ちだな。
夕方になり、サガトが戻ってきた。
アキコの家族も一緒であった。
うまい具合に招待できた、と喜んだのも束の間、思いもしなかった大変な事態になっていた。
あろう事か、客室で昼寝をしていたはずの、アキコの姿が見当たらなくなっていた。
王宮中を探したが見つからず、どうやら、メイドに連れられて王宮の外に出たことがわかった。
まさか、王宮内のメイドに裏切り者がいたとは、情けない限りである。
何としてでも、家族に知られる前に連れ戻さねばならん。
だが、王宮の外に出てしまった者を探すには時間がなさすぎる。
焦っていたところに、地下牢の看守から報告が入った。
アキコを連れ出したとみられるメイドと他に怪しい男が二名、いつの間にか牢屋に入れられているということである。
こんなことができるのは、アルフだけだ。では、なぜ、アルフはアキコを連れて戻らない?
大方、のんびり観光でもしているのであろう。
まったく、人騒がせな!
案の定、アキコの家族の前に、アルフがアキコを連れて戻ってきた。
なんとかこれで一安心である。
気を抜いて、その晩はぐっすりと寝込んでしまった。
だが、問題はそれだけではなかった。
我が寝ている間に問題は次から次へと発生していた。
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