第20話 夕食
お父さんたちはまだ、地球が異世界に召喚されたことを知らないようだった。
「それについては、夕食を食べながらお話しさせていただきます。どうぞ食堂の方へ」
ライラ様が自然に誘うが、やはり、私たちを帰す気はないようだ。
そういえば、もう夕食の時間か___。今までの時間なら朝食の時間なのだけど、元に戻れないなら、こちらの時間に合わせていかないといけないな。
通されたのは、昼間のダイニングルームとは別の場所だった。昼の場所よりも広い。
王宮だから、来客用にいくつもの食堂があるのだろう。
今回は、王様の代わりに、王子様が一緒だ。
ちなみに、私の服だが、急いでドレスに着替えさせられた。
妹の不由美から「お姉ちゃんだけずるい!」と言われたが、自分はめかし込んできたのだから、それで十分だろう。
私はスウェットだったんだぞ。さっきは、質素なワンピースだったけど。
食事は、やっぱり豪華な物が出された。
私の体は、まだ朝食の時間なので、昼食という名の夜食を食べたこともあり、かなり重い。
両親も食が進まないようだが、あれは緊張しているからだろう。
王宮だものね。無理もない。
不由美は構わずバクバク食べていた。
食事をしながら王子から説明があったが、不由美が金髪王子様に見惚れていた。
確かに、あの金髪は目を引くな。
しかし、見惚れていながも、食べるのをやめないとは、花も団子も、だな。
ライラ様はアルフが同席しているからか、上機嫌だ。
一方、アルフは・・・、普通だな。普通。なにを考えているかよくわからないな。
「つまり、この世界には、ここと同じような浮遊大陸がいくつものあるわけか」
「そうだ。それを集めれば星ができると言われているが、現時点で成功していない」
「星を作る意味があるのかい?」
「何言ってるの、お父さん!あるに決まってるでしょう!!星がなかったら、天体観望できないじゃない。私みたいな星見人(ホシミスト)が皆んな、泣いちゃうわよ」
「ああ、はいはい、亜希子の言い分はわかったから。王子との話の邪魔しないでな」
重要なことなのに、お父さんは私を軽くあしらう。
「星を作ることが、さらなる発展につながると考えられている」
「さらなる発展ね___。それは全員がそう考えているのかな?」
「いや、星を作ることの反対の人たちもいる」
「それが、魔王で、戦争になっていると・・・」
「いや、魔王は星を作るのに賛成派だ」
「あれ?じゃあ、この国が反対派なのか?」
「いや、我が国も賛成派だ。だが、魔王は武力でことを進めようとしている。話し合いで進めようとしている我が国とは違う」
「穏健派と過激派ということか___」
「何が話し合いで進めようと、だ。魔王に対抗するために勇者を召喚しろと命じたくせに」
さっきまで普通に食事をしていたアルフが、急に不機嫌になり、王子に食って掛かった。
「それは、魔王が武力で攻めて来るんだ。対抗する兵力は必要だろう」
「だから、それを話し合いで納めろと言っているんだ」
「相手が聞く耳持たないんだから、仕方ないだろう」
アルフは勇者召喚に反対していたと、ライラ様が言っていたが、本当のようだ。
「アルフが交渉したらどうなのかな?地球を召喚できるほどの魔法が使えるんだから、魔王だって話くらい聞いてくれるんじゃない?」
私は、何の気なしに話に割り込んでしまった。
「「・・・」」
あれ?ライラ様と王子様が固まっちゃったよ。
アルフは苦虫を噛み潰したよう顔をしている。
「・・・僕はその立場にない。先に失礼するよ」
そう言って、アルフは転移で姿を消した。
あれ?私、何かまずいこと言っちゃった?
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