第16話 自宅

 アルフレットさんの転移魔法で、本当に一瞬で自宅の庭に着いた。

 さっきまで、浮遊大陸いたはずなのに信じられない。

 空を見上げれば、浮遊大陸は今もそこに浮いていた。


「隠れて!」


 ボーっとしていた私は、アルフレットさんに腕を引かれて家の影に引き摺り込まれた。


「な!なに?!」


 もしかして、こんな所で壁ドン。

 十八年生きてきたけど、こんなことは初めてだ。

 まあ、今日一日初めてづくしだけど___。

 乙女としては、ときめき、一番、心臓がどきどきである。


「兵士がいる!」


「え?!兵士が何で___モゴモゴモゴ」

「シッ!」


 思いがけない事態に、声を出したら、アルフレットさんに口を塞がれてしまった。

 幸い、兵士は私たちに気が付くことなく、家の中に入っていった。


 どういうことよ?ここは私の家よ。明らかに不法侵入じゃない!

 もしかして、兵士の格好をした泥棒なの?


 アルフレットさんが、明かりの点いた居間を指さし、黙ってついて来いとジェスチャーをする。

 居間の様子を探るのだろう。

 そういえば、居間のテレビと灯りは点けっぱなしだった。


 しかし、なんだか今日は、ジェスチャー大会だろうか?

 余計なことを考えていたら、アルフレットさんに怪訝な顔をされてしまった。


 アルフレットさんの後に続いて、窓の隅から居間の中を確認すると、ソファーに座って、金髪の男の人がテレビを見ていた。

 兵士も何人か居間を出入りしているが、その男の人は、優雅にお茶を飲んでいた。


 誰よ!あれ?無駄にキラキラしているわ。


 それに、あんな高級そうなカップ、家にあっただろうか?

 時々、見慣れないお菓子を摘まんでいるところを見ると、カップも含めて向こうから持って来たのだろう。


 思わず、声が出そうになったが、我慢してアルフレットさんに手振りで尋ねる。


 アルフレットさんは、分かったという顔で、その場を離れる。

 家から離れて身を隠したところで、私はアルフレットさんに尋ねた。


「ねえ、あの金ピカは、もしかして王子?」

「第十八王子のサガトだな。歳はライラと同じだが、おじさんになるな」


「第十八って、何人王子がいるのよ?!」

「二十五だったかな?」


「あの王様、好色家だったのね!」

「ハハハ。王様だからね。子供を残すのも仕事のうちさ。好色家だというのは否定しないけど」


「それにしたって多過ぎでしょう!」

「確かにね。それよりこれからどうする?」


 アルフレットさんは、話題を現実に引き戻す。

 家に帰ろうにも、王子と兵士が待ち構えていては、また、連れ戻されてしまう。


 家族は、いつ戻って来るかわからないし、警察に届けるべきだろうか?

 それが一番正しいはずなのに、それをしたら、もうアルフレットさんに会えなくなるような気がして、躊躇してしまう。


「どうしよう・・・」

「うーん。まあ。とりあえず、僕の隠れ家に行こうか?」


「隠れ家?」

「ほら、また、僕に捕まって」


 私はまた、アルフレットさんの腕に掴まる。


「じゃあ行くよ。転移!」


 一瞬で見ている景色が室内に変わったのだった。


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