第15話 救出

『こいつが異世界人で間違いないか?』

『へい、言葉が通じないようですし、間違いありやせん』


『そこの娘、異世界人は皆、お前のように胸が貧弱なのか?』


 背の高い男が私に何か話しかけて来ましたが、もちろんわかりません。

 わかりませんが、何やらバカにされた気がします。


『成る程、確かに言葉は通じないようだな』

『それじゃあ、報酬をお願いしやす』


『報酬だな。少し待て』


 背の高い男は懐に手を入れて、何か取り出した。あれは拳銃だろうか?

 それを突きつけられた男が何か怒鳴っている。メイドは男の影に隠れて震え出した。


『てめえ!裏切るのか?!』

『裏切るもなにも、裏切り者には当然の報酬だろう』


 これは、仲間割れだろうか?背の高い男が、私を助けてくれるわけではないだろう。


 背の高い男が、拳銃の引き金にかかる指に力を入れた。

 その瞬間、男の手から拳銃が消えていた。


 背の高い男は茫然自失であるが、打たれそうになっていた、男とメイドも呆気に取られている。

 彼らがやったというわけではないようだ。


「王宮のメイドに裏切り者がいたとはな___」


 突然目の前に誰かが現れた。


「それと、こっちは魔王の諜報員か?」

『お前はアル___』


 背の高い男が全てを言い終わる前に、目の前の三人がかき消えた。


「怪我はないかな?」


 現れたのは、アルフレットさんだった。


「あ、大丈夫です。さっきの三人は?」


「王宮の牢屋に転送しておいた」

「それも魔法ですか?」


「そうだよ。僕は空間魔法が得意なんだ」

「空間魔法___。そうですか。あ、助けていただいてありがとうございました」


「それはいいよ。少しは僕のせいでもあるし___」


 扉をうちの庭に設置したことを言っているのだろうか?


「それにしても、君は無防備過ぎるよ。誰でもほいほいついていって」

「そうですね___。今回は身に染みました」


「今回はって、わかってる?国王陛下もそれとなく君を帰さないようにしていたことを」

「そうだったんですか?なんでまた?」


「扉のことを、向こうに知られないようにするためさ」

「え?地球と行き来するために設置したんですよね。なんで隠す必要が?」


「隠すのは、密かに人を送って、地球のことを探るためさ。最終的には国交を結ぶにしても、相手のことを知っておけば有利に交渉を進められるからね」

「そういうことですか___」


「それで、君をどこに送ればいいかな?」

「自宅にお願いします」


「了解」

「できれば扉の場所も変えてもらいたいのですが___」


「ああ、そうだね。少し面倒なのだが、仕方がないか___」

「安請け合いしてすみませんでした」


「いいよ、いいよ。それじゃあ君だけ転送でなく僕も一緒に行こう」

「お願いします。それから、私、井戸川亜希子といいます」


「ああ、そうだったね。アキコさんと呼べばいいのかな?」

「それでお願いします」


「じゃあ、君の家に転移するから、僕にしっかり捕まって」

「こうですか?」


 私は正面から抱きついてみる。


「そんなに密着しなくて大丈夫、腕とか肩をしっかり掴んでもらえば」


 軽く流されて仕舞った・・・。

 女性なれしてるのだろうか?こっちは覚悟を決めてやったのに・・・。


「わかりました」


 私はアルフレットさんの腕を抱え込むように掴んだ。

 思いっきり胸を当てているのに、反応がない。これは脈なしだな。

 そういえば、ライラ様が、アルフレットさんのことを好きだったっけ。

 それでも、アルフレットさんのことが気になるんだけど・・・。


 ダメ、ダメ、これは助けられた、吊り橋効果よ。私は、そんなチョロインではない。


「それじゃあ行くよ。転移!」


 私が自分の気持ちに折り合いをつけているうちに、アルフレットさんは転移魔法を実行したのだった。


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