第14話 監禁

 メイドに連れてこられたのはうす暗い部屋だった。

 どうも様子がおかしい。

 ここにきて、私は自分が攫われた可能性に思い至った。


 でもなぜ?

 私を攫っても何の得もない。


 部屋の中にはガラの悪い男が一人いた。


『うまく連れ出せたようだな』

『殺さずに済んで良かったよ』


『おい、迂闊なことを喋るなよ』

『大丈夫、こっちの言葉はわからないから』


『そうなのか?___異世界人なら当然か?」


 メイドと男は何か喋っているが、当然、私にはわからない。

 これ、攫われたんだよね?逃げた方がいいかな?

 今なら別に拘束されているわけではない。扉を開けて逃げ出せばいい。


 私がチラリと入り口の方を見たのに気づいたのだろう。男が、何か言って、ナイフをチラつかせた。


『おいおい、逃げられると思うなよ。命が惜しければおとなしくしな!』

『折角生きたまま連れ出せたんだから、ここで殺さないでよね』


『そうだな、報酬の額も変わってくるだろうからな』

『どの位もらえそうなの?もう、王宮には戻れないわよ』


『なに、心配することはない、今回のことで魔王から一生遊んで暮らせるだけの報酬がもらえるはずだ』

『そうだといいけど・・・』


『報酬をもらったら、すぐにムー大陸にでも高跳びしよう。指名手配されるのも時間の問題だろうからな』

『だったら、早く引き取りに来るように連絡してよ!』


『おう、そうだな』

『報酬も持ってくる様に忘れずにいってよね』


 男が何かスマホの様なものに話しかけている。こっちの世界にもあるんだスマホ。


『ところで、そいつ、何か勇者について喋ったか?』

『言葉がわからないって言ったでしょ』


『そうだったな。だが、そんな奴攫って意味があるのかね?』

『翻訳魔法があれば、言葉が通じるらしいわよ』


『魔法ね・・・。お偉いさんは、魔法が使えて羨ましいよ』

『全くだよね』


 その後も、メイドと男は会話を続けていたが、私には何一つわからなかった。


『まだ来ないの!』


 しばらくすると、メイドが何やらイライラしだしたようだ。


『そろそろ来るだろ。そうだ。来る前に少し味見をさせてもらうか』


 男がいやらしい目でこちらを見た。なんだろう。嫌な予感しかしない。


『そんなことして大丈夫なの?』

『生きてりゃ問題ないだろ。むしろ、従順になっていいんじゃないか?』


『壊さないでよね』


 男が私に迫って来たところで、入り口の扉がノックされた。


『チッ!来ちまったか』


 男が舌打ちをして残念そうだ。

 なんとか、この場は助かったようだが、二人の様子からすると、助けが来てくれたわけではないだろうな。

 メイドが扉を開けて、背の高い男を迎え入れられた。


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