第13話 拉致(メイド視点)
魔王様の命令とかで、異世界の女の子を王宮から拉致することになった。
いつもやっている、メイドの仕事をしながら王宮の情報を探って報告することに比べると、はるかに難しい任務だ。
任務などと言ってみたが、私は元々ただのメイドだ。
別に、スパイとして教育を受けたわけでもない。
そんな私に、こんな難しい任務をやらせないで欲しい。
私は、異世界の女の子に身振り手振りで、なんとか一緒に外に出ようと伝えた。
そして、最後には強引に腕を引っ張った。
何を考えてるかわからないけど、騒がないでついてきてよ。
できれば、私も人殺しはしたくないから___。
私は、客室の扉を開くと、廊下に誰もいないことを確認する。
「よし、誰もいないな。じゃあついてきて」
言葉はわからないようだが、それでも声をかけてから、ただの女子高生の手を引き、廊下に出る。
見つかっても不審に思われないように、走らずに歩いて王宮の出口に向かう。
まだ、夕方だが、この時間は休憩時間だ。出歩いているメイドは少ない。
夜中に連れ出すことも考えたが、夜中に一緒に外に出てはくれないだろう。
その場合、眠らせて、意識のない彼女を運び出さなければならない。
そんなことは、非力な私にはできない。
誰にも会わずに、王宮の通用口まで到着する。ここまでは順調だが、ここが一番の山だ。
通用口にも門番の兵士は常駐している。
だが、外から中に入る者には厳しくチェックするが、出ていく分にはチェックされることはない。
素知らぬ顔で門番の前を通過する。
「おい!ちょっと待て!」
無事通過できたかと思ったところで門番から声をかけられた。
どうする?走って逃げるか?だが、彼女が一緒に走ってくれるとは思えない。
「何か?」
「隣の娘は見かけない顔だが、新人か?」
「はい、今日入ったばかりで、疲れて声も出ないようです。なので、私が連れて帰るところです」
「そうか。頑張れよ。行ってよし」
「失礼します」
私は門番にお辞儀をし、彼女も倣って無言のままお辞儀をした後通用口を離れる。
さて、あとはあじとに連れて行くだけだ。
私に手を引かれて歩く彼女は、辺りをキョロキョロ見回して、まさにおのぼりさんだ。
広場に出ると、屋台の串焼き屋を指差し何か叫んでいる。
『ねえ!あれって、異世界名物串焼肉じゃない!食べてみたいんだけど!』
どうやら串焼きが食べたいようだ。
うるさくされると面倒なので、一本買ってやる。
『うーん?何の肉だろう?食べられなくはないけど、美味しいものではないのね___』
何やら失礼なことを言っているようだが、王宮で出された料理と比べては駄目だと思うぞ。
その後、路地裏に入り、心配そうな彼女の手を引いて、アジトの扉を開き、中に入った。
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