第12話 魔王1

 ここは、アトランティス大陸にある魔王城、俺様は、魔王アトラス。


「魔王様、大変です!」

「どうした?」


 優雅にランチをとっていたところに兵士が駆け込んできた。

 報告なら、昼食の休憩時間が過ぎてから来ればいいのに、気の利かない奴だ。


「レムリア王国で勇者召喚が行われました」

「アルフレットの奴か。余計な真似を___」


 俺様の邪魔ばかりしやがって!

 思わず、ランチプレートにフォークを突き立ててしまう。


「どんな勇者が召喚されたか情報は掴んでいるか?」

「それが、諜報員からの連絡によると、勇者はまだ見つかっていないようです」


「見つかっていない?それは召喚に失敗したのか?」

「いえ、召喚は成功したようです。ですが、召喚したのは勇者だけではなかったようで・・・」


「なんだ、クラスごと召喚でもしたのか?どいつが勇者か調べている最中なのだな」

「いえ、クラスごとではなく、星ごと召喚されたそうです」


「星ごと?星って、あの星か?」

「そうです。大陸が集まってできると言われている星です!」


「異世界には既に星が存在していたのか___。ちょっと待て、それは当然大陸より大きいのだよな?」

「大陸の五、六倍の大きさではないかと報告されています」


「アルフレットの奴、そんなでかい物を召喚したのか___。規格外なのにも程があるぞ」


 アルフレットが戦いに参加したら、一瞬で全滅だな。


「星がそれだけの大きさがあるということは、それだけ人も住んでいるわけだろう?」

「かなり大きな街が複数確認されています」


「その中から勇者を探すのか?いや、それだけ人がいるなら、勇者も一人とは限らないか___」

「既に王宮に異世界人が一人呼ばれています」


「その者が勇者ではないのか?」

「いえ、その者は、ただの女子高生で勇者や聖女ではないそうです」


「ただの女子高生?そんな者がなぜ王宮に呼ばれている?」

「王女の一人が付き切りで歓待しているようですが・・・」


「そうなると、そのただの女子高生が勇者の情報を知っているのか、関係者かもしれんな___。いずれにしろ、重要なキーであることは間違いないだろう」

「そうでございますね」


「諜報員に連絡して、そのただの女子高生を拉致して、勇者の情報を聞き出すように指示せよ。もし、拉致ができないようなら、王国に情報が伝わる前に処分してしまえ!」

「畏まりました。ただちに指示します」


 少し可哀想であるが、致し方ない。

 こっちらも国の存亡がかかっているからな。

 果たして勇者がどれほどの力を持っているか未知数であるが、やって来る前に潰してしまえればそれに越したことはないからな。


 取り敢えず、今直ぐに危機が差し迫っているわけではないようだ。

 俺は、ランチプレートからフォークを引き抜くと、ランチの続きを始めるのだった。


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