第11話 ジェスチャー

 昼食の後、ぐっすり寝てしまったようで、目を覚ましたのは、どうやら、こちらの時間でもう夕方のようだ。


 トントントン!ガチャ。


 ノックがしてから扉が開いた。入って来たのはメイドの女の子だった。


『あれ、起きてたんですか。起こす手間が省けました』


 何かしゃべりかけてきたが、私には言葉がわからない。


「おはようございます。寝過ぎちゃいましたかね。ハハハハハ」


 言葉はわからないけれども、挨拶はしておく。


 彼女は首を少し傾げてから、着替えの服を渡してくれた。

 シワになるし、寝づらいので、寝る前にドレスは脱いでいた。


 用意されたパジャマに着替えたのだが、つるつるして光沢があって、柔らかい手触りで、これはシルクだろうか?


 渡された服はドレスではなかった。

 少し小綺麗なワンピースだ。

 材質は木綿のような感じだ。

 ドレスは一度着れば十分なので、無難なワンピースで安堵した。


 私が着替え始めると、なぜか、メイドの彼女もメイド服を脱ぎ、同じデザインの服に着替えている。


 不思議に思って彼女の方を見ていると、こちらに気付いて説明を始めたようだ。


『これから私と、お忍びで街を見に行く・・・。やはり言葉が通じないか』


 だが、言っていることはわからない。

 ライラ様を呼んでもらった方がいいと思うが、彼女は姫様だから忙しいのだろう。

 私に付きっきりというわけにはいかないのだろう。


 メイドの彼女は頭を掻いてから、何やらジェスチャーを始めた。


 自分と私を交互に指差す。その後Vサイン。これは、二人でということかな?

 その後、唇に人差し指を立てて当てた。これはしゃべるな、静かに、でいいんだろうな?

 抜き足差し足で歩いて、キョロキョロしてから、扉を開けるまね。

 扉から飛び出して、大きくバンザイ。

 周りを見ながら、楽しそうにスキップ。

 何かを見つけて指差し、駆け寄る。

 何かを受け渡す真似をして、その後、食べるマネ。


 これは、黙って街に出て、何か食べようということかな?

 答えがわからないジェスチャーゲームは難しすぎだよ___。


 街の様子には興味があるし、街で売られている食べ物にも興味があった。

 だが、王宮から外に出るなら、ライラ様にことわった方がいいだろう。


『さあ、さっさと行くよ!』


 そう思ったのだが、メイドの彼女に腕を掴まれ、強く引かれてしまった。


 王宮勤めのメイドが一緒に行こうというのだから、大丈夫なのだろう。

 もしかすると、ライラ様の指示でやっているのかもしれない。


 私は仕方がなく、おとなしくメイドについていくことにした。


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