第8話 衣裳部屋

 ライラ様に、王宮の衣装部屋に連れて来られた。

 そこには、部屋いっぱいに、色とりどりのドレスが吊るされていた。


「これは、全部ライラ様のですか?」

「そうですよ。だから遠慮なさらずに選んでください。アキコ様とは体型が近いですから、どれでも着られると思いますから」


 本当にこんな煌びやかなドレスを借りてしまって、いいのだろうか?

 だが、こんな機会二度とないよな。

 折角だからご好意に甘えることにしよう。


「それでは、ありがたく見させていただきますね!」


 私は気になるドレスがあると、それを手に取り、体に当てて、鏡に映してみる。


「よかったわ。異世界の人もファッションに興味があって」

「女性なら誰でもあると思いますよ?」


「そうよね___。失礼なことを聞くけど、アキコ様の家は没落貴族なのですか?」


 私って、そんなに見窄らしい格好だったかしら?・・・王宮に来る格好ではなかったわね。


「これは、室内着でして、普段はこの格好で、外に出ることはないんです」


 私は慌てて言い訳をする。もっとも、ドレスなんか持ってないし、外出する時もこれと然程変わらないけれど。


「それと、私の国には貴族はいません」

「あら、そうなのですか?そんな国もあるのですね___。それでは誰が国を治めているのですか?」


「国民から選挙で選ばれた、国民の代表です」

「国民が国の代表を選ぶのですか___。その選ばれた人が国王なのですか?」


「国王ではなく、総理大臣ですね。国王に当たるのは、天皇かもしれませんが、政治には関わりません」

「複雑なのですね___」


 複雑なのだろうか?私はそれが当たり前だと思っているから複雑だとは思わないが、知らない人から見れば複雑なのかもしれない。


「ところで、私、メイドの人がしゃべっている言葉がわからないのですけど?」


 最初に取り囲まれた兵士にも、こちらの言葉が通じていないようだった。

 だが、アルフレットさんと、王様と、ライラ様には通じている。なぜだろう?


「それは、私が翻訳の魔法を使えるからですよ。普通の人は魔法が使えませんから、アキコ様がしゃべっている言葉はわからないわ」


 魔法だったのか___。未知の言語を翻訳できるなんてすごいな。


「魔法は誰でも使えるわけではないのですね?」

「そうね。才能と努力が必要ね」


「アルフレットさんが、突然現れたり、消えたりするのも魔法ですよね?」

「転移魔法ですね。でも、普通は、アルフ様のように簡単には使えませんよ」


「へー。アルフレットさんて凄いのですねー」

「ええ、大賢者ですから」


「大賢者ですか___」


 ライラと話をしながら、パーティーで着るような、派手なドレスを何着か試着させてもらったが、結局、落ち着いた普段向けのドレスを借りることにした。

 普段向けのといっても、ドレスはドレスだ。私の余所行きより、よっぽど高級だ。

 普段からドレスとは、姫様は大変なことだ。

 私なら肩がこって我慢できないだろう。


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