第5話 地球召喚

 勇者召喚を人道的に反すると拒否していいた僕に、フィリッツ国王陛下が勇者の関係者も全員召喚してしまえばどうかと提案してきた。

 それなら、勇者が元の世界に戻れなくても困ることはないか?


「そうですね、それならいいかもしれません」


「そうか!それではそれで頼む」

「わかりました。では、今から召喚しますね」


「そんなに直ぐにできるものなのか?」

「僕は大賢者ですからね。空間魔法に関することならお任せください」


 僕は、異世界から勇者とその関係者を召喚するために呪文の詠唱を始める。

 普段、魔法を使うのに呪文など唱えないのだが、流石に異世界からの召喚となればそうもいかない。

 丁寧に呪文を詠唱し、魔法を行使する。


「召喚が終わりました」

「誰も現れていないが、どういうことだ?」


 確かに、王宮の謁見の間には誰も現れていない。


「ここには入りきらないので、別の場所に召喚しました」

「そうか。勇者の関係者となると、かなりの人数になったのだな」


 そこに、外から伝令が飛び込んで来た。


「国王陛下、大変です!!」

「どうした?何事だ!」


「それが、突然天空に巨大な何かが現れました!」

「巨大な何かとは何だ!」


「陛下、落ち着いてください。それは多分僕が召喚した、勇者が住んでいる星です」

「おお、そうか。勇者が住んでいる星か。・・・星?」


「そうです。星です。勇者の関係者の関係者の関係者・・・と、たどっていくと、結局、勇者が住んでいる星を丸ごと召喚するのが良いと思いまして、そうしました」

「そうしましたって。・・・いくら何でも、無茶ではないか?」


「そうでしょうか?これなら勇者を説得してから連れてくることができますし、勇者は自分の星に帰ることもできますからね」


 異世界から勇者を召喚することは可能であるが、逆に、勇者を送還したり、異世界に行ったりはできない。

 それは、異世界が、僕たちの世界より上の界位にあるからで、上から下には落ちてはくるが、下から上には登れないからだ。


 だが、星ごとこの世界に召喚してしまえば、行き来は自由にできる。


「ああ、勇者の説得は自分たちで行ってくださいね。向こうの星に行くためのゲートは、ここに用意しておきますから」


 ゲートは、二つの、対になる魔道具の扉を二か所に設置し、二点間を自由に行き来できるようにするものだ。

 僕は、こちら側のゲートの扉を設置すると、対になる扉を設置するために、向こうの星に転移するのだった。


 転移直前、国王陛下が何か叫んでいたが、要望は叶えたのだし、もう僕は知らないよ。


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