第2話 浮遊大陸

 瞬きをしたら、月と星空は消え、青空が広がっていた。


「なにこれ?! どうなってるの? もしかして、私、気絶してた?」


 夜だったはずが、急に昼間になったのだ、考えられるのは、寝ていたか、気絶していたということだろう。

 幸い、自宅の庭であることは間違いない。

 誰かに眠らされて、攫われたわけではないだろう。


「いや、これは夢だな」


 その証拠に、青空には、島というか大陸が浮かんでいた。浮遊大陸だ。

 大陸には、緑の他、街のようなものも見える。

 双眼鏡で覗いて見ると、間違いなく街並みだ。

 頭上に逆さ吊りの街並みがあると思うと、落ちてこないか心配になる。


「えーと、蜃気楼? 光が空で反射して、地上の様子を映してる?」


 私は必死に合理的な理由を考えていた。

 そこに、突然、後ろから声をかけられる。


「夢でも、蜃気楼でもないよ」


 びっくりして振り返ると、そこには、見知らぬ青年が立っていた。


 痩せ型で背は私とさほど変わらず、男の人としては小さい方。黒髪だが、顔立ちはハーフぽい。どちらかといえばイケメンだ。

 いつに間に庭に入ってきたのだろう?


「どちら様ですか?」


 私は警戒しながらその青年に声をかける。


「僕はアルフレット、あそこから来たのだけど、ここに扉を設置してもいいかな?ここが一番近くて、設置しやすいんだ」


 アルフレットと名乗った青年は、あそこから来たと、天上の浮遊大陸を指差した。


 本当だろうか?それに、扉を設置するってどういうこと?


「扉ってなんですか?」

「ここと、あそこを繋ぐゲートの出入り口なんだけどね。実際に、設置する扉はこれなんだけど――」


 そう言うと、アルフレットさんはどこからともなく、立派な扉を取り出した。


「なんです! 今の?! なにもないところから、扉が出てきましたよ!」

「ストレージだよ。別空間に物を仕舞って置ける魔法だね」


「魔法ですか?! もしかして、あの浮遊大陸が現れたのも、夜が昼間になってしまったのも魔法ですか?」


 魔法と聞いて私は大興奮だ。だってそうでしょう。魔法だよ! 魔法!!


「そうだよ。もっとも、君が言った浮遊大陸が現れたのでなくて、この星の方が召喚されたんだけどね」


「召喚って、もしかして、異世界に来ているんですか?私!」


 なんと、異世界召喚きたー! これで受験勉強しなくていいだろう!


「そうなるね。もっとも、君だけでなく、この星の住民、全員だけどね」

「全員召喚? 凄いですね! あれ? でも、ここ、うちの庭ですよね? あれ? ここ、本当に異世界?」


 私の頭の中が?で支配される。


「それは、この星ごと召喚したからね。君の家の庭は変わらないよ」

「ああ、そうか!住民だけでなく、星ごと丸々召喚したわけか――。星ごと?! そんなことできるんですか?!」


「できるよ。――と、いうか、できてるよ。だね」


 小首を傾げるアルレットさん。

 その仕草が様になっている。イケメン補正かチクショウ!


「そっかー。この不思議な現象は召喚されたせいなんですね――」


 謎の現象の説明はついたが、余りにもファンタジーな説明に、私は理解が追いつかないでいた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る