地球召喚 ~星見人(ホシミスト)女子高生は、アイに星空のユメを見るか?~
なつきコイン
第1話 夜だったよね?
今まで夜だった筈なのに、瞬きをした瞬間に昼間になっていた。
何度か瞬きしてみるが、夜に戻ることはない。
一体何が起こったのだろう?
ない頭で必死に考える。
いや、別に、頭は体に付いているよ!
頭が無くなって、死んでしまった訳ではない。
周りを確かめると、見慣れた場所だ。
間違いなく今までいた自宅の庭である。
一体何が起こったのだろう?
改めて、瞬きする前の自分の行動を思い返す。
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私の名前は、井戸川亜希子。県立高校の三年生。
受験生だというのに、家族が旅行でいないことをいいことに、庭に出て月を見ている。
月を見ていると言っても、十五夜の満月を、団子を食べながらお月見をしている訳ではない。
自宅の庭から南西の夜空に浮かぶ、月齢六日の上弦少し手前の月を、三脚に固定した双眼鏡で観望しているのだ。
いわゆる私は、星空を楽しむ星見人(ホシミスト)だ。
双眼鏡?望遠鏡じゃないの? と馬鹿にしないでほしい。
趣味の天体観望で、星空を楽しむなら双眼鏡で十分だ。
まあ、双眼鏡といっても種類を選ぶけれどね。
なんなら、惑星を観望するのではないのなら、天体観望には双眼鏡の方が向いているくらいだ。
決して、望遠鏡を買えなかったからひがんでいるわけではない。
小型の望遠鏡に比べれば、双眼鏡の方が星雲や星団は観望しやすいし、双眼鏡で、木星のガリレオ衛星だって見えるのだから――。
趣味の天体観望に浸っていたのは、別に、家族が旅行でいないからと受験勉強をサボっていた訳ではない。
ちょっとした息抜きだ。星見人(ホシミスト)には必要な時間なのだ。
大体、受験生だからということで、私だけを置いて、家族揃って、この時期に温泉旅行に行っちゃう?
確かに、少し遅いけど紅葉の時期だし、連休で、旅行にはちょうどいいだろうけど。
まあ、中学生の妹は喜んでいたけど、私は別に、高校生にもなって家族と旅行がしたかったわけではないのだけど……。
でも、そこは、受験生の私がいるんだから、家族みんなで我慢しようよー!
家族に対して言いたいこともあるけど、そこは息抜きでちゃんとガス抜きする。
だから、これは大切なことで、決してサボっているわけではない。
とはいえ、秋も深まったこの季節、長時間外にいると流石に冷える。
息抜きで出てきたため、ちゃんとした防寒対策はしていなかった。
流石にそろそろ切り上げるとしよう。
双眼鏡から目を離し、片付けて家に入る前に、私は星空を一回り見渡した。
月があるせいで、星の数はさほど多くないが、それでも快晴のため満天の星空だ。
ふと、天頂付近に明るく輝く星があるのに気がついた。
「あれ、あんな所に星があったっけ? 惑星? 人工衛星かな? もしかして新星発見!」
その星がみるみる明るくなっていき、しかも、線を引きながら広がり出した。
「流星? 火球? 隕石? それにしては広がり方が変!」
光の線は次第に幾何学模様を描いて広がっていく。それは、まるで、魔法陣のよう。
「オーロラの可能性は? ないわね! なら、レーザー光線かしら? はた迷惑な。光害よ、光害!」
私が文句を言っている間にも、魔法陣? は広がっていき、そして、それが星空を覆い尽くすと、一際眩しく輝いた。
眩しさから、私が瞬きをすると、月と星空は消え、青空が広がっていた。
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