第十四話『湖沼ミズアビ』
自室にて。女の子が目覚めるのを待っている間、触手君の群れに見張りを任せ、俺とエーファは近くにある湖沼で血を洗い流す事にした。
「それじゃあ頼んだぞ。間違っても殺したりするなよ。目覚めたら怪我をさせないように拘束するんだ」
念を押しておく。
「ダンジョンさん外までよろしく」
その一言で俺とエーファは場所を移動していた。
「水浴び、エーファが先にしてくれ。俺は後でいいから」
「え……?」
歩きながら彼女に提案すると、予想外の反応が帰って来た。
「それとも一緒に入るか?」
残念そうにしていたので、まさかと思いながらも言ってみる。エーファは耳までほんのり赤くして俯いた。
「ダンジョン内に湯浴み出来る空間を作ったらな」
どっちかが周りを警戒しとかないと危険だからな。その事を彼女も重々承知しているのか。今日の所は諦めてくれたらしい。その代わり、心底嬉しそうに頷いた。
なんで、ここまで好かれたのか。まったくもって謎だ。
小首を傾げながら頭を悩ませていると、湖沼に着いた。
「じゃあ俺は魔物とかが来ないようにしとくから。ごゆっくりどうぞ」
紳士らしく速やかにその場を離れた。
「『索敵』の技能がレベル3になってたんだよな」
そんな独り言。つまり何を言いたいのかというと、技能を使ってある程度の範囲は魔物がいるか把握可能なのだ。
なので湖沼の水を吸って群生している草に身を隠して覗きが出来るわけだ!!
「これも紳士の嗜みってやつだ。彼女の健康状態とかを確認する為であり、やましい気持ちは一切ない!」
などと自分の良心に言い訳をしながら、気配を消す。目を凝らす。
その先に映るのはユートピア。
エーファは俺に比べれば身長は低い。だが、それは俺が高すぎるだけで、彼女も180cmはある。
スラリと伸びた手足にしっとりと濡れた純白のような肌。肌の色に映える明るく長い黄金色の髪は艶々で、神々しさすらある。
控えめではあるが女性らしい膨らみもあり、腰のくびれなど完璧と言っても過言ではない。
その素晴らしい光景を余すところなく網膜に焼き付け、
「ふぅ」
ため息を1つ吐いて、音もなく離脱した。
「凄かったな」
まだ胸が高鳴っている。
「俺も男として健全に機能して安心した」
産まれてこのかた、そっち方面の欲求や劣情を抱いたことがなかったから心配してたのだ。
自分に好意を持ってくれてる女性が現れ、初めて顕現した。
「あ、技能取得してる……」
心を落ち着かせる為に、なんとなくで見たステータス。技能の欄に見覚えのない名前が追加されていた。
───────────────────────
種族:オーガ Lv.11
《名前》
性別:Male(男)
職業:ラスボス
・パラメータ
・魔法
──特殊技能一覧──
亜空間収納(別の空間に物を仕舞える)
──技能一覧──
挑発Lv3(相手を怒らせ、攻撃的にさせる)
剣技Lv2(剣を扱う技術)
採取Lv4(薬草などの場所が分かる)
索敵Lv3(自分が敵と思ったものへの感覚が鋭くなる)
盾技Lv1(盾を扱う技術)
防御術Lv2(相手からの攻撃を防ぐ。戦闘時の感覚が鋭くなったりする)
拉致Lv1(拐う際の手際がよくなる。人に気付かれにくくなる)
潜伏Lv1(潜んでいるのがバレにくくなる)
───────────────────────
「ある意味、両方不名誉な技能だし、レベルも上がってたんだな」
拉致の技能は女の子を拐った時に、潜伏の技能はさっきの覗き見の時に習得したのだろう。
レベルの方はワイルドベアか男三人が強かったのかな? どれもあまり強敵って感じはさなかったけど。
「ナナシさん、終わりましたよ。どうかなされたのですか?」
「い、いや、なんでもない。気にするな。俺も血を流してくるかな」
「?」
慌てながら急いで泉に行く。呼びに来たエーファの顔で、彼女の裸を思い出してしまったのだ。恥ずかしい限りである。
「止めとけば良かったかもな」
微かに後悔しながら、服を脱ぎ水の中に入る。体の汚れを丁寧に洗い流す。
「ふぅ、気持ちいいな」
癒されながら肩まで浸かる。
「エーファ、いるか?」
「は、はい!」
声を掛けたら飛び上がるような勢いで茂みから彼女は顔を出した。
あれ……もしかしてこの子、覗いてた?
「いや、服の汚れをどうしようかなと思って。エーファの魔法でなんとか出来ないかな?」
「あ、そう言う事ですか。それでしたら『浄化』の魔法があるので、それを使いましょうか?」
「あぁ、俺には詳しい事はよく分からんが、頼む」
覗きに関しては人をとやかく言えるような立場じゃないしな。うんうん。などと考え頭もついでに濡らしておく。
エーファは俺の服を手に取り、魔法を掛けた。まるで予備動作のように、服に顔を埋めたが、そこにはあえて触れなかった。物凄く深呼吸してた気がしたが、鉄の意思で触れなかった。
「私は周囲の警戒に戻りますね」
彼女はそう言い残して、視界から消えた。
長時間浸かっている必要はない。俺は開放的な姿のまま仁王立ちして、ダンジョンが何処からか用意してくれた綺麗な布を『亜空間収納』から出して体をくまなく拭いた。
それから服を着て終わり。エーファと合流して、ダンジョンに帰った。
──自室に入ると、周りを不思議そうに見渡す女の子が座っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます