第十一話『新規ギノウ』
いつもと変わらず猪を狩り続け、リンゴンやエーファから教えて貰った有用な薬草を集める日々を送っていた。そんなある日。
俺は些細でささやかな区切りを迎えた。なんとレベルが10になったのだ。
「おぉ、遂に2桁か。長かったな」
作業のような狩りを終え、大きめの獲物を筋トレも兼ねて運びながら呟く。
そう言えばレベルの上限や成長速度は、種族や職業によって違うのに加え、個人差もあるらしい。
ある時、ふと気になりエーファに尋ねるとそう答えていた。
「俺の職業はラスボスとかいう特殊すぎるものだからな。種族もオーガだし。平均的な数値がないとも言ってたよな、エーファ」
感覚としてはレベルの上がる速度は遅い。エーファが言うには間隔はかなり短い。
因みに彼女のレベルは16とのこと。エルフは長命な種族なので、あまり上昇しないのだと。その代わり1でも上がれば、パラメータはぐんと伸びる。
その話を聞いて、世界は上手く出来てるなと感心した。
「レベルなんて、なるべく人には隠したいものも気兼ねなく話せるくらいには親密になってるんだな、俺達」
思い返してみて、感慨深くなる。
「それは良いんだ。仲良くなるのは悪い事じゃない。それよりも、今は自分についてだ」
ある種、節目みたいなものだろ。この機にダンジョンが結晶化させてる技能を体内に取り込んでも良いかもな。
そう考え、全速力でダンジョンまでの帰路を走った。
──ダンジョンに着いて。味気のないラスボスの間(自室)で椅子に腰掛けて、肘掛けに結晶を並べる。
「これが『盾技』これが『剣術』……」
一つ一つ確かめながら、無意味に発揮された几帳面さを駆使し綺麗に整列させた。
「一気に使って、副作用とかあっても困るよな」
臆病なので慎重に。以前エーファが使ったのと同じ量。3つにすることにした。
今日の所はね、またやるから。
「じゃあ『盾技』『剣技』『防御術』にするか」
今回は戦闘の方面に特化した物を選んだ。3つ纏めて、一気に噛み砕く。
なにかが体に入ってくる感じ。その体感も直ぐに消え、技能が俺の物となった。
一応ステータスを開いて確認する。
───────────────────────
種族:オーガ Lv.10
《名前》
性別:Male(男)
職業:ラスボス
・パラメータ
・魔法
──特殊技能一覧──
亜空間収納(別の空間に物を仕舞える)
──技能一覧──
挑発Lv3(相手を怒らせ、攻撃的にさせる)
剣技Lv2(剣を扱う技術)
採取Lv4(薬草などの場所が分かる)
索敵Lv2(自分が敵と思ったものへの感覚が鋭くなる)
盾技Lv1(盾を扱う技術)
防御術Lv2(相手からの攻撃を防ぐ。戦闘時の感覚が鋭くなったりする)
───────────────────────
「ちゃんと取得出来てるな」
『盾技』と『防御術』は相手がいないと試しようがない。後でエーファに手伝ってもらおう。
『防御術』がLv2なのは何故なのか。これはダンジョンが知っているだろう。
とりあえず直ぐに試せるのはLv2になった『剣技』の技能だけだ。
猪をダンジョンに預け、それと入れ替えで森から伐採して入手していた木を出す。
「『亜空間収納』」
普段、力任せに振るっている大剣より繊細さを追及可能な普通の剣の方が良いはず。そう思い剣を構えた。
袈裟懸けのような剣筋から、下段からの斬り上げ、一度引いて引き絞った弓の弦から放たれる矢に似た鋭い突き。
中段、横一閃。持ち替えて、さらに横凪ぎ。連続での素早い斬り込み。留めにもう一度鋭く突いた!
一連の動作で練習用の木はボロボロになっていた。剣も元々弱っていたのもあってか、もう使い物にはならなそうだ。
それでも、あれだけ本気で無茶な使い方をして折れないのをみると、技能『剣技』の効果は発揮されているみたいだ。
「太刀筋も前に比べて良くなっている気がする。自分の技術に技能の補正がかかって格段に向上したのか」
勘違いかもしれないが、俺はそう感じた。
「次は『盾技』と『防御術』だな。エーファの所に行って、また手合わせと洒落こむか」
ダンジョンに頼んで、エーファの自室まで瞬間的に移動するのだった。
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