第九話『技能ヨッツ』
「技能か」
一人きりの室内。椅子には座らず地べたに直接座っていた。
自分のステータス画面を開き、長考の真っ最中だ。議題は今しがた呟いた通り、スキルについて。
これまで幾度となく見てきたステータスを穴が空くほど見詰める。
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種族:オーガ Lv.8
《名前》
性別:Male(男)
職業:ラスボス
・パラメータ
・魔法
──特殊技能一覧──
亜空間収納(別の空間に物を仕舞える)
──技能一覧──
挑発Lv3(相手を怒らせ、攻撃的にさせる)
剣技Lv1(剣を扱う技術)
採取Lv4(薬草などの場所が分かる)
索敵Lv2(自分が敵と思ったものへの感覚が鋭くなる)
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「俺が所持している技能は全部で5つ。その内1つは特殊技能か」
特殊技能とは、限られた者しか持つことが許されない特別な技能の事である。
「俺の亜空間収納は聞いたままの能力だからな。説明を簡潔だ。無制限に物を仕舞える。便利! ってだけのものだな」
簡単に言ってのけるが、重宝されるべき代物なのに違いない。だって本当に助かるぞ。手ぶらで何処にだって行けるのだから。
「それにしたって猪をそれなりの数狩っておきながら剣技Lv1てお前。それに比べて採取Lv4てお前。どないなっとんねん」
確かに好きでリンゴンばかり採って食べてたけど。
あの赤色の果実、リンゴンって言うらしい。エーファが教えてくれた。これで、やっと好物はリンゴンです。と胸を張って言える。
技能の剣技に関しては、ただ剣を振り回してるだけじゃ駄目なのだろう。それっぽく使わねば剣技とは呼べないらしい。
思い返してみれば、一時かっこよさを求めて、自己流の俺かっこいいなんちゃって剣技をやったな。大方その時に剣技の技能を得たのだろう。
それ以降は力任せに振って獲物を仕留めてた訳なのだが。
「挑発は自然とやってたし、索敵も森がざわついてる日とかに慎重になって無意識にやってた気もするしな」
4つとも手に入れる条件は満たしている。のだが、ここから本題。
単刀直入に言おう。少なくないか? 持ってる技能の数。
「俺が何度もぶつかっている比較対象いない問題があるからなんとも言い難いけど」
でも、今は違う。比較対象いるんだよなぁ。そうエーファ。だけどここで一つ懸念がある。
「人に持ってる技能を聞くのは如何なのか。もしかしてモラルに反する行為なのでは?」
常識が大幅に欠如している自覚はあるからな。果たして聴いても良い内容なのか、悪い内容なのか。悩むのだ。
ここで俺、1つ思い出す。
「ダンジョンさんがくれたリストどこだっけ?」
思い出したものが、事実か確かめるべくリストを亜空間から探す。
「あ、あった」
余計な物を大量に入れてるため時間を使った。後で中を整理しておこう。
手に取ったリストを見る。足が痺れそうなので胡座を組む足の位置を入れ替えながら。
「あ、やっぱり……」
そこには記憶にあった通り記されてあった。初めて知る技能の数々が。
「ダンジョンさん、もしかして滅茶苦茶有能?」
隣に出てきた触手君が胸を張った。
ダンジョンは、どうやら殺した相手の技能まで奪えれるみたいです。
「これって勿論、使えるよね?」
何を当たり前のこと聞いてんですか。みたいな感じで小さめに頷く触手君。
「じゃあ遠慮なくなんぼか貰っていくね」
そう言って面白そうな技能と、ついでに魔法をダンジョンに出してもらった。
追記。上でもさらりと言いましたが魔法も奪えるみたいです。……これ誰に伝えようとしてるんだ?
とりあえず、受け取った技能と魔法を持って、エーファの所に向かう。
「あ、足が痺れた……」
立ち上がってから直ぐに転んだ。これは数分動けない。
「!?」
なるべく動かさないようにしていた足を何者かにつつかれた。誰だ! そう思い足の方に視線を移す。すると、そこには──
「触手君!?」
そう触手君がいた。つまり、これはダンジョンの悪戯。
「覚えとけよ!!」
言葉は虚しく反響し、痺れが無くなるまで俺はいじられ続けた。二重の意味で。
「──ふぅ、やっと終わってくれた」
気を取り直して、俺はエーファの所に足を運ぶ。彼女は今、与えた部屋で鍛練に励んでいるはず。
ダンジョンに頼んで扉の繋がる先を彼女のいる部屋にしてもらう。
「ようエーファ。鍛練は順調か?」
エーファはストレッチをしていた。凄い柔軟性だ。俺には絶対に真似できない角度に体が曲がっている。
「あ、ナナシさん! はい、そうですね。日々の積み重ねの成果が着実に私の物になっている。そんな感覚を覚えてるところです」
心底嬉しそうな表情で汗を拭いつつ、近付きながらそう言った。
「そうか、ならよかった。程々にしとけよ」
「はい! でも、怪我で出来なかった分を取り戻さないといけませんから。あ、それで私に何か用ですか?」
「あぁ、そうだった。これから俺も鍛練をしようと思ってな。どうせなら一緒にやろうかなと。エーファにもみせたいものがあるし」
後者の方が本命だったりするが、この際どっちでもいいだろ。
「そうなんですか。だったら是非、一緒にやりましょう!」
元気よく、彼女は快諾してくれた。
俺は魔法の原石である、小さな丸い球体を手に忍ばせながら、彼女との鍛練を開始した。
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