第39話 ユーリカリア達の剣 量産体制
カインクムは、早速、ユーリカリア達に言われた剣の製造に入る。
ヴィラレットに渡した剣の出来は、初めてにしては良かったので、そのまま渡して、様子を見てもらっている。
まだ、未知の部分があるので、カインクムは、慎重に製造に入った。
ヴィラレットの剣と似ている剣から作り、それから一番かけ離れているユーリカリアの剣と5本の剣となる。
最初に作るのは、魔法職である、ウィルリーンの剣なのだが、これが、かなり、ヴィラレットの物に似ていることから、それを作り始めた。
元となる軟鉄と鋼鉄を叩いて、伸ばし、折り曲げて、また、叩くを繰り返す。
その際に火花として飛び散るのは、不純物なので、叩くたびにその火花の出具合を確認んしつつ行う。
軟鉄と鋼鉄について、納得のいく火花の出具合になったら、軟鉄にコの字型に鋼鉄を貼り付ける。
貼り付けたら、その鉄を叩いて伸ばし、剣の形にする。
剣は、何も考えずに、ただの直剣として叩く。
形にするときは、直剣だと、かざして見ると、微妙な厚みの違いが見えてくる。
それを繰り返して、叩きだけで、ほぼ、平らになるようにする。
この時に、どれだけ平らにできるかによって、後の研ぎの時に楽になるかどうかが決まる。
慎重に厚みを見て、先端から、手元まで厚みを綺麗に揃えるには、直剣であったほうが、作業は楽になる。
納得できる厚みと長さに仕上がったら、切先の加工に入る。
切先においても、刃と同じように表面が硬くするので、切先側を残して、峰側に45°の角度で切れ目を入れる。
その切先を、叩いて、峰側に反らせるのだ。
そうする事で、切先も刃と同じように外側が硬い素材になる。
ウィルリーンに頼まれた剣が、形になると、その剣は、作業台の上にある、剣を置くための台にかけるように置いた。
今回は、5本の剣の受注を受けているので、一気に工程を終わらすのではなく、工程毎に5本を作ることにしたのだ。
そのため、剣の形になったところで、次の剣を作ることにした。
素材の軟鉄と鋼鉄を叩いて、フェイルカミラの剣を作り出す。
同じように剣の形にすと、次の剣を作るようにした。
ただ、フィルルカーシャの薙刀のような剣は、柄の中に入る部分が長かったこと、そして、ユーリカリアの剣は、刃幅が広かったことで、素材を多く使ってしまった。
残った素材でヴィラレットに予備の剣をと思っていたのだが、材料が少し足りなくなってしまい、もう一度素材屋に行って、不足分を揃えるようにしていた。
5本の剣が、形になる。
それを作業台の上に剣を置く台座に乗せてあるのだ。
5本の太刀と1本の脇差が、綺麗に並んで置いてある。
全てが、それぞれの要求仕様に応じて作られているので、長さや刃幅の違いがある剣が並んでいるのだ。
バランスの悪いようにも思えるが、それぞれの個性の剣が、並んでいるのは、爽快な眺めである。
それをカインクムは、感慨深く見ていた。
5本の剣が、剣の形になったら、今度は、焼き入れとなる。
ここからの一番心配なのは、刃幅が剣の反りに影響が出ると予測されるので、刃幅が、広くなることで、どれだけ影響が出るのか、特にユーリカリアの剣について、特に心配になったのだ。
そのため、刃幅の狭い方から焼き入れは行うこととなる。
焼き入れの際には、全体に泥を塗って、焼き入れの入り方を変えるのだ。
刃側は、切先から、元まで、同じ厚みで薄く泥を塗るが、峰側は、場所によって泥の厚みが異なる。
切先は、突くことも考慮して、刃をあまり反らさないようにするので、切先から15センチほどは、若干、刃側より厚い程度に泥を塗る。
これは、逆に反らないようにするため、わずかに峰側に反らす程度だが、刀の中央部分は、泥の厚みを少し多くする。
この厚みは、前回のビラレットの日本刀が、たまたま、上手くいったので、その時の厚みを狙って、塗っていく。
剣の根元については、切先程薄くせず、中央部分程厚くせず、徐々に、反りが柄近くになると弱くなるようにした。
泥がひび割れてないか確認すると、剣を熱していく。
吹子を使って、炎だけで、剣を熱していく。
その時、塗った泥が落ちないように注意して、丁寧に、剣の温度を上げていく。
泥の部分は、熱せられても色がわかりにくいので、柄近くの泥の塗ってない部分の色を見つつ、鉄の温度を確認する。
今まで、焼き入れをしたことがあるので、その時の経験と、前回の経験をもとに剣の温度の見極めを行うのだ。
温度の頃合いを見て、その剣を水桶の中に一気に入れると、水が蒸発する音とともに、刀の温度が一気に下がる。
この急激な温度変化によって、鉄は、変化して更に硬くなるのだ。
水の蒸発する音が無くなると、剣を引き上げる。
引き上げた剣は、峰側の方に綺麗な曲線を描いて曲がった。
綺麗なカーブを描いている。
カインクムは、出来栄えを見て、納得した表情をする。
「うん。 いい出来だ」
一言言うと、その剣を作業台の上に置く。
その時に、表面に塗った泥の厚みを思い出しつつ、残りの剣の作業に取り掛かるのだった。
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